最新記事

移民

移民流入で懲罰、トランプがメキシコ輸入品に最高25%関税を導入

Trump to Place 5% Tariff On Imports from Mexico to Curb Migration

2019年5月31日(金)16時58分
クリス・モラン

アメリカがメキシコから輸入する自動車も農産物も値上がりする Carlos Jasso-REUTERS

<関税でメキシコを屈服させようとするトランプのやり方は果たして通用するのか>

ドナルド・トランプ米大統領は30日、メキシコからのすべての輸入品に5%の関税を課す方針を明らかにした。国境を越えて入国する不法移民への対策が不十分だという理由からだ。

2回に分けたツイッターの投稿でトランプは、6月10日から5%の関税を導入し、その後も不法移民を減らす対策をメキシコが取らなければさらに税率を上げると通告している。

「アメリカは6月10日にメキシコからのすべての輸入品に5%の関税を課す。メキシコはそれまでに、自国を通過してアメリカに入国する不法移民を止めろ」とトランプはツイッターで書いている。「不法移民問題が改善されるまで関税はどんどん上がる。改善されれば関税は撤廃される。詳細はホワイトハウスから発表する」

ホワイトハウスの声明によると、米政府は7月1日に「危機が続いている」と判断すれば関税を10%に引き上げる。その後も8月1日に15%、9月1日に20%、10月1日に25%と段階的に関税を引き上げるという。

「メキシコ経由でアメリカに入る不法移民の流れを実質的に止めない限り、関税は25%が続く」と声明は通告している。

トランプお得意の「懲罰」関税

北米自由貿易協定(NAFTA)によって、参加国のメキシコ、カナダ、アメリカの域内産品に関する関税は多くの分野で撤廃された。そのため多くのアメリカ企業が工場や製造拠点をメキシコに移している。

米通商代表部によると、2018年にアメリカは3720億ドル近い製品・サービスをメキシコから輸入し、アメリカからは約2990億ドルをメキシコに輸出している。メキシコからアメリカへの輸入で最大の割合を占めるのが自動車で、2018年には930億ドルに上っている。

またメキシコは、アメリカへの最大の農業製品の輸出国で、260億ドル相当の果物、野菜、飲料などの食料品がアメリカに輸出されている。

貿易相手国への関税をトランプが「懲罰」として使うのはお決まりのやり方だ。しかしエコノミストの多くは、関税を支払うのは輸出国ではないと指摘する。むしろ、関税を払わされるのは外国製品をアメリカに輸入している企業だ。そしてこのコストは、アメリカの消費者に価格として転嫁される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:日米為替声明、「高市トレード」で思惑 円

ワールド

タイ次期財務相、通貨高抑制で中銀と協力 資本の動き

ビジネス

三菱自、30年度に日本販売1.5倍増へ 国内市場の

ワールド

石油需要、アジアで伸び続く=ロシア石油大手トップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中