最新記事

東南アジア

超激混みの露天からクーラー付きの個室まで フィリピン、麻薬対策強化が招いた「塀の中の格差社会」

2019年4月11日(木)13時06分
大塚智彦(PanAsiaNews)

折り重なるようにして露天で就寝させられるフィリピン・マニラの受刑者たち Damir Sagolj - REUTERS

<ドゥテルテ大統領が強力に推し進める麻薬対策で、刑務所が囚人であふれかえるフィリピン。塀の中には麻薬はないものの、金がある者は携帯やタバコ、さらにはVIP待遇の個室まで手に入れるという>

フィリピンの刑務所管理局(BJMP)は4月9日にフィリピン警察、フィリピン麻薬取締局、地元マニラ市などと協力して刑務所にいる服役囚の所持品検査で押収した携帯電話やタバコ、手製の武器など多数の不法所持品をブルドーザーで踏みつぶし処分した。10日の地元紙「インクワイアラー」などがその様子を伝えた。

これはマニラ首都圏にある市刑務所で過去1年間に4回にわたって実施した抜き打ち検査で押収した不法所持品を見せしめのため公開処分したもので、携帯電話300台(うちスマートフォン47台)、タバコ600本(ブランド銘柄の箱入り多数)と大量の武器がその対象となった。

武器は木製や金属製で、先端を鋭く加工して殺傷能力を高めたものばかりで、刑務所内の傷害事件などで使われたものとみられている。

同刑務所には約8000人が服役しており、その大半は麻薬関連犯罪者だが、この1年間の抜き打ち検査では麻薬は発見されなかったという。

BJMP関係者などによると、不法所持の携帯電話、タバコなどはいずれも面会に訪れた家族や友人から差し入れられた食品の中に隠されて持ち込まれたものという。なかにはその不法持ち込み品を刑務所職員が取り上げて私的に使用していた例も報告されているという。

これまでは抜き打ち検査で発見、押収した不法所持品はケソン市にあるBJMP本部で処分されていたが、今回からはマニラ市刑務所内で職員が見守るなか、ブルドーザーによってひき潰すデモンストレーションに変更され、メディアにも公開された。

これは「押収品が密かに服役囚に返されたり、リサイクルされて再利用されたり、さらには刑務所職員が服役囚との取引材料にしたりという忌まわしい習慣を断ち切るためである」とBJMPマニラのバスティラ報道官は地元メディアに語った。

こうした発言の背景には、これまでは検査で押収した不法所持品の処分に不透明な部分があり、完全に取り締まることができない実態があったことを示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感、5月は102.0 インフレ懸念

ワールド

イスラエル戦車、ラファ中心部に初到達 避難区域砲撃

ワールド

香港、国家安全条例で初の逮捕者 扇動の容疑で6人

ワールド

サウジ国王、公務に復帰 肺炎治療後初の閣議出席=報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏最新インタビュー

  • 3

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧州はロシア離れで対中輸出も採算割れと米シンクタンク

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 6

    コンテナ船の衝突と橋の崩落から2カ月、米ボルティモ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    TikTokやXでも拡散、テレビ局アカウントも...軍事演…

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 9

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中