最新記事

健康

ニンニクを食べるとアルツハイマー予防になる?

Garlic Linked to Better Memory in Alzheimer's Study 

2019年4月10日(水)17時32分
カシュミラ・ガンダー

ニンニクには、脳を活性化する作用がありそうだ Ezergil/iStock.

<マウスでは、腸内細菌にはたらくニンニク成分を与えたら記憶能力も向上した>

ニンニクを摂取することにより、老年期における記憶障害の進行リスクが減る可能性が、マウスを使った実験から明らかになった。アルツハイマー病の患者数はアメリカで580万人に達しており、2050年までに1400万人に増えるとの予測もある。今のところ、神経細胞が変性するアルツハイマー病の原因はわかっておらず、治療法も確立していない。

今回の研究では、記憶障害の進行と、消化器系の老化の関連性がテーマとなった。具体的には、ニンニクに含まれる硫化アリルという有機化合物に、記憶の減退を防ぐ効果があるかどうかが検証された。硫化アリルは「健康に良い効果が多く、解毒作用で知られている」と、研究論文の著者は解説している。

研究論文の共著者である米ルイビル大学のニーツ・ティアギ博士は、今回の研究の狙いについて以下のように解説した。「人は高齢になると、腸内細菌叢(腸内フローラ)の多様性が次第に失われる。高齢期にはまた、アルツハイマー病やパーキンソン病など、神経細胞が変性する疾病が進行し、記憶や認知能力が低下する。我々は、腸内細菌叢の変化が、加齢による認知機能の低下とどのように関係しているのか、詳しく検証したいと考えた」

ニンニクは腸にも脳にもいい

今回の研究でティアギらが着目した腸内細菌叢とは、腸に生息する多種多様な腸内細菌の集まりだが、その総数は、人体の細胞の10倍にも達するとされている。

今回の実験では、人間では56~69歳に相当する生後24カ月のマウスに対して硫化アリルを投与した。次に、これらのマウスの記憶能力を、生後4カ月のマウス、さらには、同じく生後24カ月だが硫化アリルを投与されていないマウスと比較した。

その結果、硫化アリルを摂取したマウスは、短期記憶と長期記憶の両方で能力の向上が認められた。また、これらのマウスの腸内細菌叢は、硫化アリルを摂取していない同じ月齢のマウスと比べて、よりよい健康状態にあったという。

研究チームは、高齢のマウスで記憶障害が起きる原因はNDNF(ニューロン由来神経栄養因子)の発現不全にあると考えている。硫化アリルを含むサプリメントを摂ったマウスでは、NDNFの発現が増加したからだ。硫化アリルを摂取しなかった高齢のマウスでも、NDNFの発現を促す治療を施した場合には記憶能力が向上した点も、この仮説を裏付けている。

ティアギと共に今回の研究を主導したジョシャーマヤ・ベヘラ博士はこうコメントしている。「今回の実験結果は、高齢者が硫化アリルを含むニンニクを食事の際に摂取すると、健全な腸内細菌叢の維持や認知能力の向上が期待できることを示唆している」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中