最新記事

日本社会

日本の子どもの自殺率が2010年以降、急上昇している

2019年3月13日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

子どもの自殺の心理として、「苦しみが永遠に続くという思い込み」「心理的視野狭窄(自殺以外の解決手段が浮かばなくなる)」というものがある(文科省『教師が知っておきたい子どもの自殺予防マニュアル』2009年)。こうした認知の歪みを是正する必要がある。

それでは、子どもの自殺動機にはどのようなものが多いのか。いじめを苦にした自殺が多いと思われるかもしれないが、データで見るとそうではない。過去5年間の小・中学生の自殺動機を示すと、<表1>のようになる。延べ数467件の内訳だ。

maita190313-chart02.jpg

首位は「家族からのしつけ・叱責」、2位は「親子関係の不和」、3位は「学業不振」となっている。いじめや学友との不和よりも、家族関連の要因が多いことが分かる。

日本の人口構成が逆ピラミッドになる中、子どもへの期待圧力が強まっている。過度の期待で子どもを自殺未遂に追い込んだ親の事例もあるが(「神童に過度の期待、子供の自殺未遂で気づいた親の愚かさ」NEWSポストセブン、2019年2月23日)、養育態度の歪みには注意しなければならない。

少なくなった子どもが大事に育てられる時代と言われるが、「生きづらさ」の指標とも言える自殺率をみると、<図1>のグラフの通りだ。あと少ししたら人口比の上で「子ども1:大人9」の社会になるが、その時にはどうなっているか。

「教育に関心がある」などとあまり言わないほうがいい。教育については誰もが語れるが、逆ピラミッドの人口構成で「一億総教育家」の社会になったら、子どもは潰されてしまう。自殺対策の重点は子どもに移すべきだが、教育の重点は子どもから大人にシフトするべき時だ。人生100年、かつ変動の激しい現代では、全てのステージの人が生涯、絶えず学習を続けなければならない。

<資料:厚労省『人口動態統計』
    警察庁『自殺の状況』

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「同意しない者はFRB議長にせず」、就任

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定

ワールド

トランプ政権、亡命申請無効化を模索 「第三国送還可

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中