最新記事

アメリカ社会

アメリカのミレニアル世代がいっこうに大人になれない裏事情

Growing Pains

2019年2月13日(水)16時40分
ベン・シャピロ(ニュースサイト「デイリー・ワイヤー」編集長)

子供に苦労を味わわせるのは親としてはつらいが、苦しまずして大人にはなれない C.J. BURTON-CORBIS/GETTY IMAGES

<若い人々が自立できない原因は親の世代の怠慢だ>

アメリカでは最近、「アダルティング(大人化、大人の責任を自覚しそれらしく行動すること)」という言葉がよく聞かれる。この言葉は本来、「幼い」とか「自立していない」とよく言われるミレニアル世代が年齢相応に振る舞ったときに使われる一種のジョークだった。だが彼らには、大人になる訓練が本当に必要らしい。

例えばCBSニュースによれば「アダルティング・スクール」という学校も生まれた。ここでは簡単な縫い物や料理、もめ事への対処法などのレッスンを提供しており、インターネットを介した受講も可能だ。

CBSに言わせれば、問題の根は多くのミレニアル世代の人々が「実家を離れていない」ことにある。アメリカの18~34歳の成人のうち親と一緒に暮らしている人の割合は、15年時点で34%。05年の26%と比べれば、その増加ぶりは明らかだ。

確かに実家暮らしであれば親が面倒を見てくれるから、洗濯や料理、家計のやりくりの仕方などが分からないままでもおかしくない。親への依存はだらけた精神を生む。

とはいえ、実家暮らしがそのまま親への依存につながるとは限らない。1940年には、25~29歳のアメリカ人のうち親や祖父母と暮らす割合は30%を超えていたが、当時の人々は大人としてのスキルを身に付けていた。生きていくための力を付けるため、親は子供に家事をやらせていた。つまり問題は実家暮らしかどうかではなく、親が怠けているかどうかなのだ。

世代間の違いと言ってもいい。私たちの祖父母の世代は大恐慌や第二次大戦の時代に育ち、年齢的に成人になるよりずっと前に「大人」と同じように行動するすべを身に付けていた。

責任を持たせるしかない

40年当時、平均初婚年齢は男性が24歳、女性が21歳だった(現在は男性29.5歳、女性27.4歳)。昔は就職も早かったが、今は教育水準が高くなっている分、社会に出る時期が遅くなっている。親になる年代も同様だ。ニューヨーク市の女性が第1子を出産する平均年齢は31歳、全米では26.3歳だ。

では、本当に問題なのは何だろう。いい年になった子供たちがソファに座り込んだままでも文句を言わず、仕事を見つけろとか家賃を払えと言うでもなければ、自分の家庭をつくれとせっつくこともないのが現代の親たちのありがちな姿だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン氏、2日にウィットコフ米特使とモスクワで会

ビジネス

英住宅ローン承認件数、10月は予想上回る 消費者向

ビジネス

米テスラ、ノルウェーの年間自動車販売台数記録を更新

ビジネス

英製造業PMI、11月改定50.2 約1年ぶりに5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 7
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 8
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中