最新記事

腸内細菌

腸内フローラをAIで解析して実年齢を推定──老化や病気の予測に活用できるかも

2019年2月8日(金)14時30分
島田祥輔

4歳以内の誤差で的中できた

今回、「腸内フローラから実年齢を予測できた」と発表したのは、AIを活用して創薬や老化研究に取り組む米国企業「InSilico Medicine社」を中心とするグループだ(Science / News)。

グループは、健常者と何らかの病気の人の腸内フローラを比べた過去の研究データ10個を利用した。これらのデータベースは、他の研究グループが過去に別の研究で作成したものであり、個人が匿名化された上で自由に再利用できる。「オープンデータ」と呼ばれているものだ。

腸内フローラのデータはオーストリア、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、カザフスタン、スペイン、スウェーデン、アメリカに住む20〜90歳の健常者1165名から集められた。

データのうち90%を、AIの一手法であるディープラーニングで解析したところ、最終的に39種類の細菌が年齢予測に重要であることがわかった。

そして、ここで得られたアルゴリズムを使って残り10%の腸内フローラデータから年齢を予測させたところ、4歳以内の誤差で的中できたという。

年齢ではなく地域を予測しているのでは、という指摘も

個人レベルでの予測としてはかなり高い精度だが、この発表は学術雑誌に掲載される前の段階のものなので、これから専門家によるチェック(査読)などを受ける中で何らかの指摘があるかもしれない。

すでにウェブサイトでは、専門家同士がコメントをしている。例えば、中国のデータベースには若年層の登録が多く、ヨーロッパのデータベースには高齢層の登録が多ければ、腸内フローラの予測は年齢ではなく地域の違いを反映しているのではないか、という指摘がある。これは、オープンデータを活用する研究では常につきまとう課題だ。

とはいえ、これを機に腸内フローラからの年齢予測、そして腸内フローラから見る老化の研究がさらに進むことを期待しよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中