最新記事

日本経済

日本経済の「輸出けん引」に明確な陰り 安倍政権と日銀に問われるリスク対応力

2019年1月23日(水)18時40分

枠組みを左右する世界経済リスク

政府の経済財政諮問会議は18日の会議で、民間議員が提示した検討課題に海外リスクへの対応が明記された。

19年前半の検討課題の冒頭には「今年は、国際経済状況が不安定化するリスクがある」として、「国際経済のリスクが顕在化した場合には、柔軟で機動的な経済運営を実行する等の対処をすべきである」と書き込まれた。

日銀が発表した昨年10月末の「展望リポート」では、海外リスクに関して、保護主義への言及はほとんどなかったが、23日公表分では、海外リスクが「強まっている」と記述。「企業や家計のマインドへの影響を注視していく必要」との表現も加えた。

市場関係者の間では「日銀は警戒感をあらわにしている」(SMBC日興証券のリポート)との声も出ている。

すでに設備投資マインドには、影響が出ている。11月機械受注はプラス予想に反して落ち込み、10ー12月期は6四半期ぶりの前期比マイナスになる可能性が高まっている。1月ロイター短観でも、製造業のマインドが2年ぶりの低水準に落ち込んだ。

世界経済の先行きを警戒した企業心理の悪化を一段と加速させかねい要因が、もう1つ存在する。米連邦準備理事会(FRB)が、中国の予想を超える減速などに直面した場合、現在の引き締め政策から緩和政策に転換し、その影響が外為市場で円高となって波及してくる経路だ。

デロイト・トーマツの・リスク管理センター長、大山剛氏は、FRBが金融政策を現在の引き締めから中立、もしくは緩和方向にかじを切って、自国景気を支えることになるのではないかと予想。「結果的に金融政策の緩和余地が乏しい日本は、再び円高に苦しみ、輸出産業にとっては厳しい環境となりそうだ」と見ている。

世界の政策当局者は、緩やかな景気拡大というメーンシナリオを維持しているが、米中経済摩擦の長期化など、リスク要因が台頭した場合、にわかに情勢が急変する可能性もある。

すでに輸出競争力が衰え、貿易赤字が基調として定着する兆しが見え始めた日本にとって、リスクシナリオの顕在化に備える「余力」があるのかどうか、政府・日銀の力量が問われそうだ。

(中川泉 編集:田巻一彦)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月24号(2月17日発売)は「ウクライナ戦争4年 苦境のロシア」特集。帰還兵の暴力、止まらないインフレ。国民は疲弊し、プーチンの足元も揺らぐ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF、25日に対米審査公表 ドル「歴史的平均に近

ワールド

米南部州がアップル提訴、iCloudの児童性的虐待

ワールド

トランプ氏、イランに合意迫る 「10日以内」に対応

ビジネス

米新規失業保険申請、2.3万件減の20.6万件 予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 5
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 6
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 7
    カンボジア詐欺工場に「人身売買」されたアフリカ人…
  • 8
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 9
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 10
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中