最新記事

日本経済

日本経済の「輸出けん引」に明確な陰り 安倍政権と日銀に問われるリスク対応力

2019年1月23日(水)18時40分

1月23日、2018年の貿易収支が23日に発表され、日本の「輸出けん引力」に明確な陰りが見えてきた。一方で2019年は、米中経済摩擦が早期に解決しない場合、中国経済の減速が鮮明となり、世界貿易全体に波及するリスクが強く意識され出している。世界的な貿易量の一段の減速や円高リスクシナリオが台頭した際に、内需への波及を食い止めるために日本政府・日銀に十分な対応力があるのかどうか。予想外の試練が待ち受けている可能性もある。2017年に横浜で撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

2018年の貿易収支が23日に発表され、日本の「輸出けん引力」に明確な陰りが見えてきた。一方で2019年は、米中経済摩擦が早期に解決しない場合、中国経済の減速が鮮明となり、世界貿易全体に波及するリスクが強く意識され出している。世界的な貿易量の一段の減速や円高リスクシナリオが台頭した際に、内需への波及を食い止めるために日本政府・日銀に十分な対応力があるのかどうか。予想外の試練が待ち受けている可能性もある。

輸出数量の減少が意味する未来

「日本が貿易黒字で稼ぐ局面は、今年フェードアウトしていく」──。日本総研・調査部長の牧田健氏は、2019年は輸出けん引力が弱まり、設備投資も世界経済の不透明感の強まりから弱めに転じる可能性があると指摘。戦後最長の景気拡大が見込まれている日本経済は、従来はゼロ%とみていた景気後退の確率が、10-20%に上がったと予想する。  

顕著な現象は、輸出数量の失速だ。12月貿易統計によると、輸出数量指数の前年比が昨年11月からマイナスに転じ、12月は6%近い落ち込みとなった。

特に中国向けは同14%減少となった。具体的には半導体や半導体製造装置が急減し、通信機、自動車も振るわなかった。

アジア向け輸出も同じ傾向となり、半導体関連の落ち込みが大きい。

一方、対米輸出は今のところ増勢を維持している。ただ、主力の自動車輸出は、減少傾向となっている。

グローバルな貿易にも、不透明感が漂っている。21日に公表された国際通貨基金(IMF)世界経済見通しでは、2019年の成長率見通しが前回の3.7%から3.5%に下方修正された。中国経済のさらなる減速と英国の欧州連合(EU)離脱をリスク要因として指摘し、一段の混乱が起きる可能性にも言及している。

こうした情勢を踏まえ、農林中金総合研究所の主席研究員・南武志氏は、日本の輸出動向について「米中摩擦などの影響はまだ大きくはないが、今後の展開次第では一段と下押しすると思われる。足元では中国経済の減速を受けたアジア(含む中国)向けの輸出減が目立つが、早晩、欧米向けが減少に転じる可能性もある」と見ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ

ビジネス

アングル:中国のロボタクシー企業、こぞって中東に進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 7
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 10
    第三次大戦はもう始まっている...「死の4人組」と「…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中