アングル:トランプ氏、ホルムズ海峡再開に高い壁
写真は停泊中のガスタンカー。3月11日、オマーンのシャイナスで撮影。REUTERS/Benoit Tessier
Sarah Young John Irish
[16日 ロイター] - トランプ米大統領は、世界のエネルギー供給の約5分の1が通過するホルムズ海峡の再開に向けて同盟国に協力を要請した。しかし、大規模な有志連合を結成できたとしても、イランによる封鎖を解除するのは極めて困難とみられる。
この狭い海峡の片側に位置するイランは、2月28日に始まった米国とイスラエルによる攻撃に対抗すべく、無人機(ドローン)やミサイル、機雷を配備している。これにより、巨大な石油・ガスタンカーにとって極めて重要なこの水路を、危険地帯へと変貌させた。
<イランはなぜ今、海峡を封鎖したのか>
イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の司令官は2011年、海峡の封鎖は「コップ一杯の水を飲むより簡単だ」と豪語したが、この海峡への脅しはその前から幾度となく繰り返されてきた。
IRGCは近年も海峡封鎖の可能性をちらつかせている。16年や18年の制裁や核開発計画をめぐる緊張のさなか、さらには昨年6月のイスラエルと米国による攻撃の際も同様だ。
専門家らは長らく、海峡封鎖は最後の手段だと分析してきた。イランと敵対する国々に長期的な戦略の転換を促すリスクがあり、自国のエネルギー産業への報復を招きかねないからだ。
しかし、最高指導者の暗殺とともに2月28日に始まったイランへの攻撃が、その状況を根底から覆した。イラン当局はこの紛争を「存亡の危機」と位置づけ、強硬派のIRGCが戦略の主導権を握るようになっている。
<脅かされているのは何か>
イランとオマーンの間に位置し、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶホルムズ海峡は、クウェート、イラン、イラク、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)といった産油国にとって、唯一の海への出口である。
原油価格は16日、一時22年以来の最高値まで高騰した。国連の指摘によれば、原油高は22年のロシアによるウクライナ侵攻直後に見られたような、新たな生活費の危機の引き金になりかねない。
分析会社ケプラーによれば、硫黄やアンモニアを含む世界の肥料の約33%がこの海峡を通過している。紛争が長期化すれば、肥料ショックを誘発し、世界の食料安全保障を脅かす恐れもある。
戦争の長期化は、1970年代の中東オイルショックの再来のような、世界的な経済危機への不安をかき立てる要因となる。
<海峡の安全確保の難しさ>
海運ブローカーのSSYグローバルによれば、航路の幅はわずか2海里(約3700メートル)。船舶はイラン軍の部隊が潜伏できる島々や険しい海岸線の目と鼻の先で針路を変えなければならない。
イランの正規海軍はほぼ壊滅状態にあるものの、IRGCは依然として高速攻撃艇や小型潜水艦、機雷、さらには爆発物を積んだジェットスキーなど、多彩な攻撃手段を保持していると、元英海軍中佐のトム・シャープ氏は指摘する。
非営利調査団体「情報レジリエンス・センター」によれば、イラン政府は月に約1万機のドローンを製造する能力を有している。
1日に3ー4隻の船舶を護衛して海峡を通過させることは、上空援護を担う7ー8隻の駆逐艦を投入すれば短期的には可能かもしれない。だが、小型潜水艦のリスクがどの程度軽減されているかにも左右され、数カ月間にわたってこの態勢を維持するには膨大な資源が必要になるとシャープ氏は語る。
欧州中東・北アフリカ研究所のアデル・バカワン所長は、イランの弾道ミサイルやドローン、浮遊機雷の配備能力を削いだとしても、船舶は依然として自爆攻撃の脅威にさらされ続けるだろうと警告する。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の機関誌、RUSIジャーナルのケビン・ローランズ編集長は、戦争が数週間続くようであれば、何らかの護衛体制が構築されるとみている。
「世界は湾岸からの石油を必要としている。それゆえ、防衛措置を講じる計画が立案されている」と同氏は語る。
<トランプ氏の狙いと同盟国の動き>
トランプ氏は15日、多くの国が軍艦を派遣することに期待を示し、それを公然と要求した。さらに、支援を取り付けるべく7カ国と協議を進めていることも明かした。
この発言は、同氏が米国際開発金融公社に対し、海運会社に保険と保証を提供するよう指示した1週間後のことだ。
英国のスターマー首相はトランプ氏と海峡再開の必要性について協議しており、以前には、英政府が同盟国と様々な選択肢を模索していると述べていた。
欧州連合(EU)の外相に当たるカラス外交安全保障上級代表は16日、中東で展開するEUの海軍任務を原油輸送の要衝ホルムズ海峡に拡大することについて、EU外相から前向きな姿勢は示されなかったと述べた。マクロン仏大統領はトランプ氏の要請に先立ち、欧州やアジアの数カ国が護衛のための共同ミッションを計画しているものの、それは紛争終結後に限られると明言していた。
ドイツは、紅海でのミッションでさえ効果が乏しいとして、その強化にすら懐疑的な姿勢を崩していない。
日本とオーストラリアは16日、海峡を通過する船舶を護衛するための艦船派遣は予定していないと表明した。
<周辺の海運の要衝では何が起きたか>
イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、保有兵器が限られるにもかかわらず、米欧の海軍による対応をよそに、2年以上にわたり紅海を通過する海運の大半を麻痺させている。
多くの海運会社は現在も、アフリカ大陸最南端を回る長大なルートを強いられている。デンマークの海運大手マースクは、1月からスエズ運河ルートへの段階的な復帰を目指すと述べていた。
EU主導の部隊はソマリア沖の海賊対策では成果を上げているが、相手はイランのIRGCとは比べ物にならないほど装備の劣る集団だった。
<ホルムズ海峡に代わる選択肢はあるのか>
UAEとサウジアラビアは、石油パイプラインを増設することで、ホルムズ海峡を迂回するルートを模索してきた。
だが、これらは現在稼働しておらず、2019年にサウジアラビアを横断するパイプラインがフーシ派によって攻撃された事態は、こうした代替手段も脆弱であることを浮き彫りにした。





