最新記事

ヘルス

老化に勝つには筋トレよりもゆっくり走ろう

Want to Age Well?

2018年12月20日(木)18時30分
カシュミラ・カンダー

週3回、45分のジョギングで細胞の老化を遅らせることができる RYANJLANE/ISTOCKPHOTO

<有酸素運動を続ければ遺伝子を守る粒子が元気になる>

年齢を重ねても元気でいたければ、筋トレに励むよりもゆっくり走るのが一番。そんな研究報告が出た。

この研究は、ライプチヒ大学(ドイツ)のウルリッヒ・ラウフス教授らが欧州心臓病学会誌に発表したもの。教授らは細胞の老化を抑えるにはどんな運動がベストかを調べるため、有酸素運動と筋トレ、高強度インターバルトレーニング(HIIT)の3つを比較した。

注目したのは染色体の末端にあって遺伝子を保護しているテロメアと呼ばれる粒子。テロメアは経年劣化するが、テロメラーゼのような酵素が十分にあれば、テロメアが短くなり劣化するのを遅らせることができる。

被験者になったのは30~60歳の健康な非喫煙者で、過去1年間は週に1時間以上の運動をしていなかった男女266人。彼らにどれか1つの運動を無作為に割り当て、半年間にわたり週3回続けてもらった。

有酸素運動はウオーキングかランニングを45分。筋トレは8種類のマシントレーニング。HIITは4分間の高強度運動と3分間の低強度運動の組み合わせを4セットだ。そして半年間のトレーニングをやり終えた124人を対象に、彼らのテロメアの長さを測定し、半年前と比較した。

結果、有酸素運動とHIITではテロメアが長くなり、テロメラーゼの活動も活発になっていたが、筋トレではそうした効果を確認できなかった。

英ニューカッスル大学のヨアキム・スパイリドプロス教授は本誌の取材に、「筋トレではなく有酸素運動がテロメラーゼを活性化するというのは意外な発見だ」と語った。「筋トレでも心肺機能は同じように強化されるが、有酸素運動には何か別のメカニズムがあり、それが老化を遅らせるのだろう」

どうやら、有酸素運動には体内の炎症を抑える効果もあるようだ。この研究はテロメラーゼを活性化する栄養素やサプリメントの開発に道を開くものでもあると、教授は指摘した。

細胞の老化を防ぐには有酸素運動が一番で、筋トレはあくまでも補助――ということだろうと、今回の研究チームを率いたラウフス教授も言う。さあ、重いバーベルは置いて、軽やかに笑顔でジョギングに行こう。

<本誌2018年12月25日号掲載>


※12月25日号(12月18日発売)は「中国発グローバルアプリ TikTokの衝撃」特集。あなたの知らない急成長動画SNS「TikTok(ティックトック)」の仕組み・経済圏・危険性。なぜ中国から世界に広がったのか。なぜ10代・20代はハマるのか。中国、日本、タイ、アメリカでの取材から、その「衝撃」を解き明かす――。

20241015issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年10月15日号(10月8日発売)は「米経済のリアル」特集。経済指標は好調だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国財政相会見、刺激策の「規模」不明 市場の期待は

ビジネス

情報BOX:中国、景気底上げへ積極財政出動 財政相

ビジネス

中国9月CPI減速、PPIは半年ぶり下落率 デフレ

ワールド

イスラエル、イラン攻撃目標を軍・エネ施設に絞り込み
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリメント「3つの神話」の噓を暴く
  • 2
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパートに行って「ある作品」を作っていた
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 5
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 6
    迫るロシア軍からドネツク州ポクロフスク近郊で、大…
  • 7
    冷たすぎる受け答えに取材者も困惑...アン・ハサウェ…
  • 8
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思…
  • 9
    メーガン妃とヘンリー王子は「別々に活動」?...久し…
  • 10
    アルツハイマー病治療に新たな可能性...抗がん剤投与…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 3
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 4
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 6
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 7
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 8
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 9
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 10
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 8
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中