最新記事

インドネシア

邦人4人に禁固刑判決のインドネシア 金採掘場を視察だけで実刑の特殊事情とは?

2018年12月16日(日)19時35分
大塚智彦(PanAsiaNews)

世界最大級の金鉱山を抱えるパプアの採掘現場 KOMPAS TV / YouTube

<違法に金採掘現場を視察していただけで実刑判決を受けた日本人。そこにはパプアという土地の抱える問題があった──>

インドネシアの東端、ニューギニア島の西半分に位置するパプア州のナビレ県にあるナビレ地裁は12月12日、金の採掘現場を違法に視察したとして出入国管理法違反(資格外活動)の罪で6月以来身柄を拘束していた日本人男性4人に対し、禁固5カ月15日と罰金1000万ルピア(約7万7000円)の実刑判決を言い渡した。

4人は東京の会社社長などいずれも50歳代で6月11日にナビレ県ラガリにある金の採掘現場を視察していたところ、入管職員に身柄を拘束された。4人の日本人のうち2人はインドネシアでの就労許可と暫定滞在許可を取得していたが、他の2人は就労が禁止されている到着ビザだけだった。

到着ビザだけの2人に加えて就労、暫定滞在の許可を得ていた2人についても入管当局は「就労許可」にパプア州が明記されていないとしていずれも同州での労働は「資格外活動」に当たるとして、身柄を拘束し、起訴していた。

4人はいずれも「指摘されるような就労はしていない」として一貫して無罪を主張してきたものの、主張は退けられ有罪判決となった。判決にこれまでの未決拘留期間が含まれるのかどうか現時点では判然としていないとされ、この点などを確認して12月28日までに4人は控訴するかどうかを判断するという。

外国人の摘発相次ぐパプア州

現地移民局関係者などによると、パプア州ナビレ県などに点在する金の採掘現場や鉱山に外国人が多く視察に訪問しているとか、労働者として働いているとの情報が寄せられ、集中的に取り締まり捜査をしていたところ、視察に訪れた日本人をみつけ、拘束したという。

このほかに同様の容疑でこの日本人4人を含む外国人37人が拘束され、この中には中国人16人、韓国人1人が含まれているという。

中国人、韓国人の拘留者も同じ12日に裁判でほぼ同様の実刑判決を受けたとされ、外国人には「強制退去」ではなく、起訴して正式裁判に持ち込み、有罪判決にするという厳しい対応でインドネシア側が臨んでいることが裏付けられた。

パプア州は1998年に崩壊したスハルト長期独裁政権下では西端のアチェ州、2002年に独立を果たした東ティモールと並んで国軍による「軍事作戦地域(DOM)」に指定されていた。理由は独立を求める武装組織による治安部隊との戦闘、衝突が頻発していたためで、海外のマスコミも立ち入りが厳しく制限されていた。

民主化が実現してDOMが解除されたものの、パプア州では依然として独立組織「自由パプア運動(OPM)」の活動が続いている。

12月2日にはパプア州ンドゥガ県の橋梁工事で働く労働者がOPMの一派とみられる武装集団の襲撃を受けて19人が殺害される事件も起きている(「インドネシア、独立目指す武装集団が労働者19人殺害 国軍と銃撃戦も」参照)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏インフレは当面2%程度、金利は景気次第=ポ

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中