最新記事

東南アジア

インドネシア、独立目指す武装集団が労働者19人殺害 国軍と銃撃戦も

2018年12月6日(木)17時47分
大塚智彦(PanAsiaNews)

武装集団の犠牲となった労働者たちのため棺が用意された Antara / REUTERS

<来年春に行われる大統領選を控えて、政治に関する動きが目立つインドネシア。パプア州では独立派によるテロが続いている>

インドネシア最東端、ニューギニア島の西半分を占めるインドネシア領パプア州の山間部で12月2日、橋梁の建設工事にたずさわっていた労働者が正体不明の武装集団に襲撃され、労働者19人が殺害される事件が起きた。

事態を重視したジョコ・ウィドド大統領は国軍・警察に治安回復を指示するとともに国軍部隊を現地に急派、ハディ国軍司令官も12月5日に現地に到着するなど治安回復と武装集団の捜査を本格化している。

事件を起こした武装集団についてインドネシアの報道機関はパプア州の独立を求める武装組織「自由パプア(OPM)」の犯行であるとの見方を強めていたが、12月6日に「西パプア解放軍」を名乗るグループが犯行声明を出した。OPMとこのグループの関係は現時点では明らかになっていない。

政府は襲撃事件を受けて犯行は「武装犯罪組織」によって行われ、使用された武器は国軍から盗まれたものとして「独立運動」や「独立運動組織」などという言葉を意識的に避けており、あくまで犯罪として対処する姿勢を強調していた。

12月2日、パプア州ンドゥガ県イギ郡にあるイギ川、アウラク川で行われていたパプア縦断道路の橋梁工事現場に突然武装集団が現れ、そこで働く労働者を差別発砲し、スラウェシ島マカッサル出身の労働者など19人が殺害された。負傷者や死んだふりをして難を逃れた生存者も数人いるという。

さらに12月3日午前には襲撃があった橋梁工事現場から約10キロ離れた国軍の警備所付近でやはり正体不明の武装集団による発砲があり、銃撃戦となった。この襲撃で兵士1人が死亡、1人が負傷したという。

武装集団はその後山間部などに逃走しており、国軍と警察は部隊を現地に急派して、行方を捜索するとともに付近の警戒を強化しているが、これまでのところ武装集団の発見、確保には至っていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃

ワールド

シリアで米兵ら3人死亡、ISの攻撃か トランプ氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 10
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中