最新記事

宇宙探査

NASAの探査機「インサイト」が火星着陸:火星の内部はどうなっているのか

2018年11月30日(金)16時30分
鳥嶋真也

インサイトの想像図 (C) NASA/JPL-Caltech

<NASAの探査機「インサイト」が火星への着陸に成功した。インサイトは火星の内部を探査し、人類を火星に送り込むために必要な、重要な科学的成果をもたらすと期待されている>

米国航空宇宙局(NASA)の火星探査機「インサイト」が、2018年11月27日、火星への着陸に成功した(参考)。インサイトは火星の内部を探査し、火星が、また地球や月のような岩石をもつ天体の、誕生と進化の歴史を解明することを目指している。

火星の内部構造に重点を置いた探査を行う初のミッション「インサイト」

インサイト(InSight)は、NASAがフランスやドイツの宇宙機関などと共同開発した探査機である。

今年5月に打ち上げられ、約7か月間、約4億8000万kmの旅を経て、火星の赤道付近にある「エリシウム平原(Elysium Planitia)」と呼ばれる広大な平原に着陸した。活動期間は約1年の予定で、これは火星の時間では約2年に相当する。

着陸成功に際して、NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「今日、私たちは人類の歴史の中で、8回目の火星着陸に成功しました。インサイトは火星の内部を探査し、人類を火星に送り込むために必要な、重要な科学的成果をもたらしてくれるでしょう」と関係者を讃えた。

インサイトは、火星の内部構造に重点を置いた探査を行う初のミッションである。

火星がどのように誕生し、これまで進化してきたかはまだわかっていない。それを調べるには、火星の地下について知る必要があるが、じつは火星の地下がどうなっているかもまだはっきりとはわかっていない。

そこでインサイトは、地震計や温度計、そして火星が自転軸に対してわずかにふらつく「極運動」と呼ばれる現象を検知できる装置が搭載されている。

たとえば地震計は、火星でも地震が起きているかどうかといったことから、その頻度や規模、分布などを調べることができる。さらに地震の波が内部でどう変化するかを見ることで、火星内部の地殻やコア(核)などがどのような物質でできているかがわかる。

温度計は、火星の内部で熱がどのような具合いになっているのか、深さなどによってどのように変化しているのかといったことがわかる。そこに地震計のデータを組み合わせると、内部のどの物質から、どのくらい熱が生成されているかということもわかる。

そして極運動を調べることは、極運動そのものの動きを知るだけでなく、そこからコアの大きさや密度を推定することができる。

その成果は、火星のみならず、地球や月といった、火星と同じように岩石でできた惑星と比較することで、似ている点や違う点、あるいは違いがなぜ生まれたのかといった研究にも役立つ。さらに、太陽系の外にある系外惑星の研究にもつながる。

NASAの科学ミッションの責任者を務めるThomas Zurbuchen氏は「インサイトは火星だけでなく、地球と月のような他の岩石惑星や、他の恒星のまわりを回る何千もの系外惑星の形成についての理解も深めることになるでしょう」と期待を語る。

torishima1130a.jpg火星に着陸した「インサイト」から見た風景 (C) NASA/JPL-Caltech

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中