最新記事

日韓関係

日韓共同宣言から20年 韓国の日本文化開放はどこまで進んだ?

2018年11月28日(水)19時13分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

北海道ブームも起こした『ラブレター』

第1次開放から約1年後、待ちに待った2次開放が解禁になった際には、韓国映画振興委員会と国際映画製作者連盟(FIAPF)が認めた83の国際映画祭のうちいずれかの受賞作品であり、またセンサーシップが全年齢観覧可能映画が上映できる条件となった。このため韓国内では、買い付けた映画を上映させるために、国内の映画祭主催者と口裏を合わせて何かの賞に入賞させるという荒業にでた配給会社も多かったという。

この時、公開されたのが韓国で大ブームとなる岩井俊二監督の『ラブレター』である。韓国では1999年11月20日に公開され若者を中心に大ヒットした。当時韓国に旅行した多くの日本人が、突然「お元気ですか〜?」と日本語で声を掛けられてびっくりした経験をしたという。これは映画『ラブレター』の中で主人公の中山美穂が叫ぶ名セリフである。いまだに韓国人に知っている日本語を聞くと「こんにちは」や「ありがとう」と並んで「お元気ですか?」を挙げる人が多い。


1999年の後も、実に3回もリバイバル上映された日本文化開放の成功事例『ラブレター』 JTBC Entertainment/ YouTube

また、この映画のヒットによって映画の舞台になった北海道への韓国人のロマンが高まり、その後北海道ロケをする韓国撮影隊が続出した。韓国のプロモーションビデオやCM、また韓国映画に登場する日本の舞台が北海道が多いのはやはり『ラブレター』の影響だろう。

第3次開放は、第2次からわずか9か月後に実施された。映画祭未受賞作品もR-18以外のすべての日本映画が上映可能となった。このあたりから日本映画が大量買い付けされ、様々なジャンルが公開されることになる。完全開放(第4次開放)となったのは2004年。それまで国際映画祭受賞作品のみ公開可能だった劇場用アニメーションも2006年の1月に全面開放になった。

3次から4次まで多少時間がかかったのは、2001年7月に日本の歴史教科書問題が勃発し、一時中断されたせいだ。筆者もこの時期には韓国に住んでいたが、市場で買い物をしていたら見ず知らずの店員やタクシーの運転手にこの件に関してどう思うかを聞かれたり、日本への怒りなどを何度か聞かされた覚えがある。このように文化開放と日韓の政治問題は密接に結びついている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、金融安定監視評議会刷新へ 規制負担軽減で成長促

ワールド

米政府、ベネズエラ産原油輸送船舶のさらなる拿捕も準

ビジネス

日銀には、物価目標実現に向け適切な政策運営期待=城

ワールド

ウクライナ巡り欧州で週末協議、トランプ氏「進展なら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 3
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 4
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 9
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中