最新記事

映画祭

旭日旗から中国美人女優の失踪問題まで 今年も政治が持ち込まれた釜山国際映画祭

2018年10月15日(月)18時45分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

コンペディション部門の会見で旭日旗問題について問われた國村隼 스포츠조선 / YouTube

<政治的な対立を終息させた映画祭に論争を呼び起こしたのは、政治的な踏み絵というべきメディアによる愚問だった>

今年もこの季節がやって来た。アジアを代表する映画祭のひとつと言っても過言ではない釜山国際映画祭が10月4日、華々しく開会された。映画関係者はニュースで釜山国際映画祭の話題を見ると秋の訪れを感じる。

2014年、セウォル号沈没事故を扱ったドキュメンタリー映画『ダイビング・ベル』の上映中止をめぐって映画関係者が主催者と対立して以降、ボイコットが続いていた釜山国際映画祭だったが、今年は映画関連9団体がすべて復帰。和合と正常化元年を宣言してのスタートだった。だが、何事にもトラブルはつきもの。映画祭開幕直後の6日、台風25号"コンレイ"が釜山を直撃。毎年恒例の海辺でのイベントや舞台あいさつなどがキャンセルされたり、場所を移動して開催せざるを得ない状況となった。また、話題を集めたのが日本から審査員として参加した俳優・國村隼への記者会見での質問だった。

参考記事:セウォル号、接待禁止に台風直撃 韓国社会の問題が噴出した釜山映画祭

國村隼は、2016年に公開されヒットした韓国映画『哭声/コクソン』に出演し、韓国でもよく知られた日本人俳優の一人だ。今回の映画祭でコンペディション部門であるニュー・カレンツ賞の審査員に起用されたのもそのためだろう。そんな國村に対して、10月4日ニューカレンツ審査員の記者会見の場で、韓国メディア「オー・マイ・ニュース」の記者が、「済州島で行われる国際観艦式に、日本の軍艦が旭日旗を掲げ参加すると告知してきた事に関して"俳優として"どう思うか?」という質問を投げかけた。

しかし、この質問の意図は"俳優として"というよりも"日本人として"國村がどう思っているのかを問うものだろう。韓国人と政治など深い話題になったことがある人や、韓国在住の日本人なら何度か遭遇したであろうこの状況。韓国では日韓関係についてときに「それで、あなたはどっち派なの?」といった思想信条を試すような質問をされることがある。そんな状況で人気俳優や有名人がこの答えを間違ってしまったら、その後の活動にも影響が出てしまうかもしれない。

今回のこの記者の問いに対し、國村準は「申し訳ありませんがその内容についてよく把握していないため、もう少し詳しく説明してくれないか?」と記者に再度詳しい内容を説明してもらい、旭日旗について「日本海軍自衛隊の伝統のある旗だと知っているが、あの旗に対する思いの違いは僕よりも上の世代だと、韓国の方は不快に思われる意味合いをあの旗がもっている事は非常に理解できる。自衛隊は旭日旗が伝統なので意見を曲げないということよりも、そのことで不快に思われる人たちの思いを汲むべきだろうと個人的には考えている」と発言した。

また、「今の日本政府は旭日旗問題だけでなく、色々な面で保守的な色合いを強めているということが、日本国内でも問題になっているので、(今回の旭日旗の問題も)そういう流れの中のひとつかな、と思います。個人的にはその旗にこだわる必要はないじゃないかと思う」と個人の意見を述べた。


コンペディション部門の会見で旭日旗問題について問われた國村隼 스포츠조선 / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国大手銀行、高利回り預金商品を削減 利益率への圧

ワールド

米、非欧州19カ国出身者の全移民申請を一時停止

ワールド

中国の検閲当局、不動産市場の「悲観論」投稿取り締ま

ワールド

豪のSNS年齢制限、ユーチューブも「順守」表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中