最新記事

映画

セウォル号、接待禁止に台風直撃 韓国社会の問題が噴出した釜山映画祭

2016年10月26日(水)06時30分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

「Welcome to the Hub of Asian Cinema」というキャッチコピーを掲げる釜山国際映画祭。写真は2012年のオープニング作品上映のようす REUTERS/Lee Jae Won

 今年も「映画の秋」がやってきた。10月6日から10日間、釜山は世界中から映画関係者が集まり華やかな雰囲気に街が包まれた。

 偶然にも丁度同じ時期に、日韓両国で毎年大きな映画祭が開催される。釜山国際映画祭が終わり、数週間後には東京国際映画祭が開幕する。今年は10月25日から、釜山と同じく10日間の開催だ。

 毎年この時期になると、映画業界のバイヤーたちは釜山に東京にLAに(11月のAFI映画祭)と、出張へ旅立ち忙しい。映画の買い付けはもちろん、自社が買った映画の上映や監督、俳優などゲストの招待を行う場合もある。今回の釜山国際映画祭では、筆者が以前勤めていた配給会社も、購入したイギリスのゾンビ映画を上映し、元同僚らは釜山で毎日忙しく飛び回っていたようだ。

コンペ部門は中国の長編初監督作2本が受賞

 そして16日には閉会式とともに釜山映画祭各受賞作が発表された。コンペティション部門のNew Currents賞は2作とも中国映画が受賞する結果となった。「The Donor(捐贈者)」を監督したZang Qiwuは、2005年から2012年まで中国で最も有名な映画監督の1人であるチャン・イーモウの助監督を務めた人物で、本作が初監督長編作品での受賞だった。もう1作の受賞作「神水の中のナイフ(Knife in the Clear Water 清水裏的刀子)」は、これから第17回東京フィルメックスのコンペティション部門でも上映される予定の作品。こちらも、中国チベット族の映画監督ペマ・ツェテンのプロデューサーも務めたことのあるワン・シュエボーの初監督作品。両作とも初監督作品であるにもかかわらず、すばらしい映画を発表し納得の受賞となった。

 さて、釜山と東京。両映画祭共に「アジアでナンバーワンの映画祭」を謳っているが、実際にはどうなのか数字で比べてみよう。今年で21回を迎える釜山国際映画祭に対し、東京国際映画祭は第29回。歴史としては、東京の方が数年古い。一方、今年の開催規模を見てみると、204作品(提携企画を含めると400本、ただしプレミア上映は31本)上映で98の国と地域が参加の東京国際映画祭に対し、釜山映画祭の今年の作品数は、299作(そのうち、プレミア上映作品は94作)、参加国は69カ国となっている。多様な国からの作品をチョイスした東京に対し、釜山は参加国は少ないもののプレミア上映作が多い。誰よりも早く作品を見たい新しい物好きという韓国人の特性が反映されているといえる。

 また、上記、受賞作品で言えば、コンペ作品が釜山映画祭では「New Currents」賞となっているのを見て分かるように、映画界に新しい流れとなるような新人監督作品をメインに扱っているのに対し、東京では総合的に優れた作品に賞を授与している違いがあるのも特徴的である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、EUが凍結資産を接収すれば「痛みを伴う対応

ビジネス

英国フルタイム賃金の伸び4.3%、コロナ禍後で最低

ビジネス

ユニリーバ、第3四半期売上高が予想上回る 北米でヘ

ワールド

「トランプ氏は政敵を標的」と過半数認識、分断懸念も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中