最新記事

「儲かるエコ」の新潮流 サーキュラー・エコノミー

日本の消費者は欧州と違う、循環型経済に日本企業はどうすべきか

CHANGING NEEDS

2018年10月11日(木)12時00分
大橋 希(本誌記者)

VECTORSTORY/ISTOCKPHOTO; POLIGRAFISTKA/ISTOCKPHOTO

<「儲かるエコ」へと、経済の大変革が始まった。地方創生にもつながり得るサーキュラー・エコノミーに日本は乗り遅れるな。本誌10/10発売号「『儲かるエコ』の新潮流 サーキュラー・エコノミー」特集より>

※本誌10/16号(10/10発売)は「『儲かるエコ』の新潮流 サーキュラー・エコノミー」特集。企業は儲かり、国家財政は潤い、地球は救われる――。「サーキュラー・エコノミー」とは何か、どの程度の具体性と実力があるのか、そして既に取り組まれている20のビジネス・アイデアとは?

サーキュラー・エコノミー(循環型経済)の進展は日本企業にとってどのような意味を持つのか。コンサルティング会社、アクセンチュアの海老原城一マネジング・ディレクター(サステナビリティ日本統括)に話を聞いた。

◇ ◇ ◇

資源の消費をできるだけ減らすという観点と、儲かるビジネスモデルの結節点がサーキュラー・エコノミーだ。企業が新たな優位性を生み出し勝ち残るための戦略であり、環境政策を経済モデルに昇華させたものだ。

かつては大量生産によって、資源高を製品価格へ転嫁することを抑えてきたが、資源価格が高騰するなか、2000年以降の日本の数値からはその限界が見えている。「売って終わり」ではなく、再生・再利用し続けることで価値を最大限に引き出すサーキュラー・エコノミーが求められている。

日本でその牽引力となっているのは、欧州で顕著な環境保護の意識というより、消費者の思考や行動の変化だ。店に並んだ商品の中から選択する「従順な購買」から事前にネットなどで欲しい物を調査する「わがままな購買」へ、そして現在は「わがままな利用」へと消費行動が変わってきている。必要なときに使うことができれば買わなくてもいい。人々は物の所有より、利用したときの「成果」に敏感になっている。

日本が強みとしてきたモノづくりでは、優れた製品を作ることが競合との差別化要素だった。だが消費者が使いたいときだけサービスを提供する形になれば、求められる品質も変わる。例えば車1台当たりの稼働率が上がればより耐久性が求められ、逆に一利用者が短時間乗るだけならシートの座り心地は少し下がってもいいかもしれない。

地方創生にもつながり得る

難しいのは従来型のビジネスモデルで成功している会社ほど、サーキュラー・エコノミーでは既存の事業計画との齟齬が生じること。シェアリングが進めば車の販売数は減り、例えば100台売れていたものが20台になる可能性もある。その代わり、ニーズが変わらなければ売れた車の稼働率は5倍になるので、点検・整備などを含めた売り上げのタネは出てくるだろう。

大企業よりスタートアップのほうがそうした市場に入っていきやすいことは確かで、フリマアプリのメルカリやカーシェアアプリのエニカなどは典型的なシェアリングの成功事例だろう。

【参考記事】サーキュラー・エコノミー 世界に広がる「儲かるエコ」とは何か

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中