最新記事

貿易戦争

貿易戦争ついに日本にも? トランプ、安倍首相に自動車輸出削減・現地生産拡大を要望

2018年9月22日(土)11時35分

9月21日、24日にニューヨークで開かれる日米通商協議(FFR)と26日の日米首脳会談では、貿易不均衡是正が大きなテーマになる可能性があることが分かった。写真は2015年4月、ワシントンで(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

24日にニューヨークで開かれる日米通商協議(FFR)と26日の日米首脳会談では、貿易不均衡是正が大きなテーマになりそうだ。複数の関係筋によると、米側は非公式に日本側に対し、自動車の米現地生産拡大と輸出削減を求めてきている。自動車輸出削減は自由貿易の原則に反するだけでなく、国内の生産体制や雇用問題に直結し、日本経済全体にも大きな影響を与えかねず、日本側がどこまで自国の主張を貫けるのか注目される。

また、米側は合わせて2国間の自由貿易協定(FTA)締結も強く求めてくる可能性が高く、牛肉やジャガイモなど農産物の輸入拡大も、大きな争点になるとみられる。

複数の関係筋によると、米国は年間7兆円規模の対日貿易赤字の半分以上が自動車と同部品で占められていることを問題視しているもようだ。

昨年の日本から米国への自動車輸出台数は約174万台。一方、米国内で生産されている日本メーカーによる現地生産台数は約377万台。現地生産の規模が2倍となっているが、米側は現地生産の一段の拡大と日本からの輸出台数の削減を求めているという。

米・メキシコ間で合意した修正された北米自由貿易協定(NAFTA)の中に、自動車の数量規制とみられる項目が入ったことも日本政府・与党内での警戒を高めている。そこでは、メキシコからの完成車輸出が一定量を超えた場合、25%の関税を課すと明記された。政府関係者の1人は「米国が日本に対しても、同様の対応を求めてくる可能性がある」と指摘する。

また、経済産業省は2019年度の税制改正要望で、自動車関係税の大幅引き下げを要求している。表向き「2019年10月の消費税引き上げへの対応」(自民党幹部)だが、日米交渉を見据えた「自動車業界対策」(与党関係者)とも言われる。

武藤敏郎・大和総研名誉理事(元財務次官・元日銀副総裁)は21日、ロイターのインタビューで、日米通商交渉で自動車産業がどのような影響を受けるかが、日本経済最大の課題であると指摘。

可能性が指摘されている対米自動車輸出の数量規制については「米国には成功体験があるため、魅力的と考えている」と述べるとともに、日本もかつて実施したことがあるが「一度導入すると見直しが難しく、日本経済に厳しい結果となる」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中