最新記事

仕事

レジ打ちバイトが見つかった俳優が問いかける「働くって何だろう」

2018年9月11日(火)16時37分
松丸さとみ

「バイト」をしていた姿を写真に撮られて話題になったジェフリー・オーウェンズ ABC News-Youtube

<80年代の人気俳優が、スーパーで「バイト」をしていた姿を写真に撮られ話題になり、それが「働くとはどういうことか」ということを喚起してさらに注目を集めている>

売れない俳優のレジ打ちは惨め?

1日のうち最も長い時間を占める「仕事」。好きな仕事で食べていければ幸せだが、そうでない人も多いだろう。「働くこと」ってなんだろう?などと考えたことはないだろうか?

米国で1980年代、お茶の間で人気だったテレビ番組「コスビーショー」に出演していたが現在はすっかり表舞台に姿を見せなくなった俳優が、食料品店で「バイト」をしていた姿を写真に撮られて話題になった。

俳優の名前はジェフリー・オーウェンズだ。1984〜1992年まで米NBCで放映されていたコメディ番組にレギュラーで出演していた。最近はあまりテレビで姿が見られていなかったようだった。

ある時、ニュージャージー州のスーパーマーケット・チェーンで袋詰め作業をしている姿を、買い物客の1人に写真を撮られ、英デイリーメール紙(8月30日付)に掲載されてしまった。アルバイトをしていたのだ。同紙は「ここのスタッフの時給は11ドル(約1200円)」と書き、写真を撮った人物の談話として「すごく気の毒に思った。あれだけ長い間テレビに出ていたのに、レジ係になっちゃうなんて」という言葉を掲載した。

デイリーメールに続き、米大手FOXニュースもオーウェンズがスーパーで働く姿を報じた。

プロ選手引退後に床掃除でしのいだ人気俳優も

こうした報道は、世間から「Job shaming」(人の職業を辱める行為)と受け取られた。そしてそんな報道に反応して、世界中のファンやハリウッドから、オーウェンズを支持する声が上がった。アメリカン・フットボール(NFL)の選手から俳優になったテリー・クルーズは、「俺はNFLを引退した後、床掃除をしていた。必要ならまたやる。勤勉に働くのは何も恥ずかしいことなんかじゃない」とツイートした

他にも自身のアルバイト経験を投稿する俳優やクリエーターが相次ぎ、#ActorsWithDayJobs(定職を持っている俳優)というハッシュタグがツイッターでトレンド入りした。

全米芸術基金(NEA)が2014年に発表した調査によると、本職が別にあり2つ目の仕事として芸術家をしているという人の割合は、全芸術家の11.6%を占めた。ここでいう芸術家には、アナウンサーやデザイナー、プロデューサーなど多様な職業が含まれる。俳優だけに限ると、俳優業以外の仕事を本職としている人の割合は20.8%と倍近くになった。NEAが「本職」と定義しているのは、「その人が最も長い時間就労している仕事」であり、本職が俳優であってアルバイトを別にしている人はこの数字に表れていない。そのため、どちらが本職にせよ食べていくために「二足の草鞋を履いている俳優」とすると、この数字はもっと高くなる可能性が大きい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

G7、ロシアに圧力強化必要 中東衝突は交渉で解決を

ビジネス

ユーロ高大きく懸念せず、インフレ下振れリスク限定的

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕 標的リストに知事

ビジネス

再送(11日配信記事)豪カンタス、LCCのジェット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中