最新記事

日本社会

全国の孤独死の3分の1は東京23区で起きている

2018年9月26日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

ちなみに大都市の中で見ると、孤独死には地域性がある。東京都監察医務院の資料から、都内23区別の孤独死者数がわかる。死因が不明の死者のうち、自宅で亡くなった単身者だ。これを各区の人口で割れば、孤独死の発生率になる。2015~17年の3年間の平均値を計算し、地図に落とすと<図1>のようになる。

maita180926-chart02.jpg

同じ大都市の特別区だが、最高の台東区(76.9)と最低の中央区(32.2)では倍以上の開きがある。50を超える区には色をつけたが、孤独死の多発地帯は北部や北東部に固まっている。台東区、豊島区、北区、葛飾区では60を超える。

23区の孤独死率と住民の平均所得はマイナスの相関関係にあり、貧困と孤独死の関連がうかがわれる。しかしむしろ、経済的貧困より人間関係の希薄さ、「関係の貧困」の影響が大きいのではないか。

「関係の貧困」の状態にある高齢者は、時代とともに増えている。家族の絆が乏しい未婚の高齢者は、2000年では58万人だったが、2015年では155万人になり、2040年には255万人に達すると予測される(国立社会保障・人口問題研究所)。

こういう人たちの「つながり」を創出する実践が求められている。大阪のマンションで空き部屋を使って高齢住民の食堂を作ったところ、彼らの集いの場として機能しているという(9月23日、毎日新聞)。調理を担当するのは障害者で、障害者が働く場にもなっている。空き家や廃校を活用し、こうした「交流センター」を設けるのもいいだろう。

また、これから高齢者になるのはITにある程度親しんだデジタル世代なので、それを介した安否確認のシステムを張り巡らせるのもいい。今や、中年層でもスマホの所有率が95%を超えるので、スマホを活用すれば難しいことではないはずだ。

人間にとって、他者とのつながりは欠かせないが、成り行きまかせではなく、意図的に生み出さないといけなくなっている。地域行事への参加を呼び掛けるような、伝統的なやり方では限界があるだろう。現在と未来の社会状況に即した戦略を取る必要がある。アメリカやイギリスなど他の先進国では、ICT(情報通信技術)を使った「つながり」の創出が、日本より進んでいる(総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」2018年)。

<資料:厚労省『人口動態統計』
    東京都監察医務院
    『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計』

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

豪ビーチ銃撃の死者15人に、容疑者は父と息子の2人

ビジネス

中国、来年さらに積極財政運営 超長期特別国債発行

ワールド

香港最後の民主派政党解散、中国政府締め付けで活動不

ワールド

ゼレンスキー氏、NATO加盟断念の用意 ドイツで米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中