最新記事

中越関係

ベトナムで反中感情が再燃、政府の外資誘致に抗議デモ

2018年6月25日(月)11時45分

「愛国心」に感謝

こうした中国側の圧迫に対するベトナム政府の抵抗は限定的だ。

ベトナム共産党の中枢は、そもそも国内に反中感情が存在することを認めることすら滅多にない。グエン・ティ・キム・ガン下院議長は15日、「国民の愛国心と、重要な問題に関する彼らの深い関心に感謝する」と語るにとどめ、この問題を回避した。

ベトナム共産党トップのグエン・フー・チョン書記長は17日、99年間の租借権を伴う経済特区について、心配には及ばないと国民に訴えたが、やはり中国について具体的な言及はしなかった。

「誰であれ、混乱をもたらすためにこの国に来るような外国人に土地を渡すほど愚かではない」という同書記長の発言を国営メディアが報じている。

今月10日に起きた抗議行動は大半が平和的なものだったが、南部ビントゥアン省では一部が暴徒化し、自動車が燃やされ、怒った群衆が機動隊に対して投石や体当たりを加えた。

同省では、ベトナム漁船に対する中国の威嚇や、中国が建設した発電所による土壌汚染、主に中国向け鉱物資源を採掘するための森林伐採などの問題が山積しており、長年にわたる人々の憤激が高まっていたと、著名弁護士のTran Vu Hai氏は語る。

人々の怒りは中国だけではなく、汚職が多く、破壊的な中国の商業的利権の言いなりだとみられている地方政府にも向けられている。「人々がなぜ怒っているのか調査せず、問題を解決することもない。この地域では、当局への信頼はすでに失われてしまった」と同氏は語る。

今回の抗議行動における規模と連携は、ベトナム一般市民を勇気づける一方で、ある程度の異議申立てを許容しつつ統制を維持するという与党共産党の綱渡りを困難なものにしている、とアナリストは語る。

急成長するベトナム経済を人質に取ることが可能な、重要な貿易相手国である中国を怒らせるリスクも生じている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ビジネス

午前の日経平均は大幅続伸、5万円回復 AI株高が押

ワールド

韓国大統領府、再び青瓦台に 週内に移転完了

ビジネス

仏が次世代空母建造へ、シャルル・ドゴール後継 38
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中