最新記事

中越関係

ベトナムで反中感情が再燃、政府の外資誘致に抗議デモ

2018年6月25日(月)11時45分

巧みな扇動

中国側はこうした抗議行動を真剣に受け止めている。ベトナム駐在の中国外交官は今月、中国の経営者団体やベトナム政府、現地メディアと会合を重ねた。

在ベトナム中国大使館によるウェブサイト上の投稿によれば、Yin Haihong代理公使がベトナム当局に対して、中国企業と中国市民を保護するよう「要請」した。同大使館は、ベトナム当局から「隠された動機」を持つ者が「意図的に状況を歪めて表現し、中国と関連づけている」との報告を受けたという。

過去にもベトナムでは今回と同じような抗議運動が発生している。2014年には、中国が中部ベトナム沖に石油掘削リグを配備したことに対する抗議行動があり、2016年には台湾プラスチックグループ(台塑集団)<1301.TW>が運営する製鉄プラントでの環境汚染事故を巡って数カ月におよぶデモが繰り広げられた。

ベトナム外務省報道官は、ロイターの質問に対して、中国には触れずに、「過激派」が「違法な集会を扇動」したと回答。また、ベトナムの政策は国民利益に奉仕するものであり、企業と投資を支援していると付け加えた。

フェイスブックで多くのユーザーからフォローされている著名弁護士Nguyen Van Quynh氏は、抗議行動が組織的なもので、暴力行為が扇動されていることは明らかだ、と語る。これらは、細心の計画が立てられ、国の治安維持手続きについての知識を有していることも示しており、ビントゥアン省が当局の弱点になっていたと指摘する。

「抗議行動や暴動は、ますます大規模で、組織だった巧妙なものになっており、こうした組織化の知識やスキルを持つ人物や中心的グループが存在する可能性を示している」と同氏は述べた。

現旧の国会議員からは、長年にわたって先送りされてきたデモ規制法案を、再び検討すべき時期が来たとの声も上がっている。憲法では集会の自由が保障されているが、抗議行動は警察によって解散させられる場合が多く、参加者は「治安の乱れ」を招いたとして拘束されている。

一方で、もっと世論に耳を傾けるべきだという声もある。

「政府は、国民が何を気にしているのか配慮する必要がある」とベトナム国会事務局のグエン・シ・ズン事務次長は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

[マニラ 19日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

オアシス、トヨタ・豊田織機の株保有 買付価格引き上

ビジネス

ドイツ輸出・鉱工業生産、4月は予想以上に減 米国か

ビジネス

ベトナム、5月の対米貿易黒字が急増 関税交渉に影響

ワールド

タイ国軍、カンボジアとの国境紛争で「高レベルの作戦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪んだ認知
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    壁に「巨大な穴」が...ペットカメラが記録した「犯行…
  • 5
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    脳内スイッチを入れる「ドーパミン習慣」とは?...「…
  • 8
    女性が愛馬に「後輩ペット」を紹介...亀を見た馬の「…
  • 9
    韓国新大統領にイ・ジェミョンが就任 初日の執務室で…
  • 10
    ウーバーは絶体絶命か...テスラの自動運転「ロボタク…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 9
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 10
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中