最新記事

はやぶさ2

探査機「はやぶさ2」が撮影した小惑星「リュウグウ」

2018年6月27日(水)11時38分
鳥嶋真也

リュウグウはまるで「そろばんの珠」

この前後で明らかになったリュウグウの姿は、円錐を上下に2つ合わせた、横から見るとひし形のような形をしている。たとえるなら「そろばんの珠」がいちばん近いだろうか。関係者や宇宙ファンのSNSでは、ガンダムの「ソロモン」や、スター・ウォーズの「デス・スター」にもたとえられている。

ちなみに、こうした形の小惑星は、じつは珍しくなく、ほかにも似たような形の小惑星は数多く観測されており、専門的にはtop shape、「コマ型」と呼ばれている。コマとは回して遊ぶ、あのおもちゃのことである。

jaxa004.jpg

コマ型の小惑星は、じつは珍しくない (C) JAXA

しかし、研究者たちはリュウグウがコマ型をしているとは思っておらず、「意外だった」という。

他のコマ型の小惑星はどれも自転周期が速いことが知られており、まさにコマのように速く回転したために、小惑星が変形し、こうした形になったと考えられている。ところが、リュウグウの自転周期はこれらよりも遅く、この傾向から外れている。

なぜ、リュウグウがコマ型になったのかはまだわからないというが、たとえば、かつては自転が速かったものの、なんらかの原因で遅くなった、という可能性が考えられるという。

ちなみに小惑星の自転速度が速くなったり遅くなったりするメカニズムは、「ヨープ(YORP)効果」で説明できる。これは太陽光の圧力(太陽輻射圧)や、小惑星から出る赤外線の反発力によって、自転速度が変化するという現象である。

形以外のところに目を向けると、リュウグウの表面の色は、場所によっていくつか異なっている。この違いは物質の組成などを反映している可能性があるという。

さらに、別の天体がぶつかったクレーターのようなものもいくつか見え、てっぺんには岩塊のような出っ張りも見えるなど、地形の起伏が大きな天体であることもわかった。

jaxa005.jpg

「はやぶさ2」が6月20日18時50分(日本時間)に撮影したリュウグウ。冒頭の写真と比べ、こちらは拡大補間と明暗強調(明るさを2乗)が行われており、地形などがやや見やすくなっている (C) ONCチーム : JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中