最新記事

人体

腸内の「第2の脳」、排便を促進──仕組みを解明する新発見

2018年6月4日(月)19時00分
高森郁哉

yodiyim-iStock

脊椎動物の腸の中には、脳と脊髄からなる中枢神経系から独立した腸管神経系があり、「第2の脳」とも呼ばれている。最新の研究により、腸管神経系が排便を促進する仕組みが初めて解明された。

腸管神経系とは

腸管神経系(ENS)は、消化管壁の中に存在する神経ネットワークを指す。英国の生理学者ジョン・ニューポート・ラングレーが20世紀前半に自律神経系を交感神経系、副交感神経系、腸管神経系に分類するなど、その存在は早くから知られていた。

人間のENSは5億個のニューロンで構成されている。これは脳のニューロンの200分の1、脊髄のニューロンの5倍に相当する。

これまで、ENSが中枢神経系と連携して腸の働きを助けていることは知られていたが、具体的な仕組みについては不明な部分もあった。

豪フリンダース大の研究

オーストラリアのフリンダース大学で神経生理学を専門とするニック・スペンサー博士らのチームは、マウスを使った実験でENSの働きを解明する研究成果を論文にまとめ、米国神経科学学会が発行する学術誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に発表。科学系メディアのサイエンス・アラートなどが報じている

論文によると、ENSが大腸の推進運動を促している事実はよく知られているが、大腸に神経性収縮を伝えるENSの発火パターンは未知のままだったという。この発火パターンを探るため、研究チームはニューロンの高解像度画像と電極を使ってマウスの大腸の平滑筋組織から電気信号を記録し、数百万もの細胞に関わるニューロン発火のリズミカルなパターンを発見。このパターンが腸内の筋収縮を促進し、体から排泄物を押し出していることを確認した。

ENS研究の将来性

スペンサー博士はサイエンス・アラートの取材に応じ、「消化管のユニークな特徴は、脳や脊髄から完全に独立して機能できる完結した神経系を持つ唯一の内臓であるという点」だとし、進化の観点からENSが「第1の脳」だとする研究もあると指摘した。

同博士はまた、今回の研究でENSにおけるニューロンの大規模集団が腸の収縮をもたらす仕組みが初めて解明されたとし、今後はこの成果が基礎となり、慢性の便秘などENSの機能不全による腸疾患の治療法が進歩する可能性があると述べた。

MAGAZINE

特集:5Gの世界

2019-3・26号(3/19発売)

超高速大容量の通信でネット利用が快適に...... どころで済まない5Gの潜在力と激変する未来の姿

人気ランキング

  • 1

    アフリカの違法エナジードリンク、「6時間たちっぱなし」で販売禁止に

  • 2

    「囚人式」コンディショニングが、ビジネスパーソンに必要な理由

  • 3

    全米を震撼させた裏口入学スキャンダル、その驚きの手口

  • 4

    モデルの乳がんを、レンブラントは意図せず描いた【…

  • 5

    トランプ元側近で「極右」のスティーブ・バノンに会…

  • 6

    「虐待が脳を変えてしまう」脳科学者からの目を背け…

  • 7

    500年間誰も気づかなかったダビデ像の「目の秘密」【…

  • 8

    日本の重要性を見失った韓国

  • 9

    完璧としか言いようがない、イチロー選手の引退劇

  • 10

    すべてのパソコンをタブレットに変えたら、どれぐら…

  • 1

    日本の重要性を見失った韓国

  • 2

    500年間誰も気づかなかったダビデ像の「目の秘密」【名画の謎を解く】

  • 3

    韓国のPM2.5が危機的状況で、比較的空気の綺麗な日本に注目が集まる

  • 4

    モデルの乳がんを、レンブラントは意図せず描いた【…

  • 5

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

  • 6

    日本よ!「反韓・嫌韓」は時間の無駄だ

  • 7

    北斎は幽霊っぽさを出すために子供の頭蓋骨を使った…

  • 8

    「韓国にまともな民主主義はない」アメリカも抱く誤…

  • 9

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 10

    「この国に銃は必要ない」ニュージーランドで銃の自…

  • 1

    日本の重要性を見失った韓国

  • 2

    家畜のブタが人食いブタに豹変──ロシア

  • 3

    映画『ボヘミアン・ラプソディ』が語らなかったフレディの悲劇

  • 4

    自殺者数、米軍兵力、初任給... 韓国のリアルを10の…

  • 5

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 6

    【動画】サメを虐待した金持ち息子に軽すぎる刑

  • 7

    モデルの乳がんを、レンブラントは意図せず描いた【…

  • 8

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 9

    韓国のPM2.5が危機的状況で、比較的空気の綺麗な日本…

  • 10

    『ボヘミアン・ラプソディ』を陰で支えた、クイーン…

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
NWデジタル編集部ほか求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月