最新記事

北朝鮮情勢

南北首脳会談に動き出した朝鮮半島、米朝対話は実現するか

2018年3月6日(火)16時17分
シェーン・クロウチャー

韓国からの特使団を笑顔で歓迎する金正恩朝鮮労働党委員長(3月5日) KCNA/Reuters

<平昌オリンピックから始まった南北対話ムードを、トランプ政権はじゃませず概ね静かに見守ってきた。大統領より下位レベルで対話に応じるなど突破口は開けるか>

朝鮮半島の危機を不安な気持ちで見守ってきた人々にも、少しはホッとできる展開と言えるだろうか。この数週間、アメリカも北朝鮮も、相手を壊滅させるという脅しを口にしていない。それどころか、3月5日には韓国の特使団が北朝鮮の首都・平壌を訪問。世界を破滅的な戦争に巻き込みかねない危機的な状況を打開するために、北朝鮮の最高指導者である金正恩朝鮮労働党委員長と会談を行った。北朝鮮の朝鮮中央通信は6日、金正恩は南北首脳会談に向けて「満足のいく合意」を得らた、と報じた。

会談に先立って韓国・平昌で開催された冬季オリンピックは、スポーツイベントとしてだけでなく、政治的なイベントとしても大きな成功をおさめた。南北朝鮮はこの大会に、統一旗の下、合同チームとして出場。大会期間中に両国の当局者たちが生産的な協議を行い、それが今回の韓国特使団による平壌訪問につながった。

「今回の会談は2011年以来はじめての直接交渉だ」と、シンクタンク王立国際問題研究所(ロンドン)アジア太平洋プログラムのジョン・ニルソンライト上級研究員は言う。彼はこれについて「大きな前進だ」とし、評価すべきだと続けた。「韓国側が実際に会談に踏み切り、アメリカがそれを阻止しようとしていないことは、いい兆候だ」

「舌戦」はやや沈静化

韓国の文在寅大統領にとって、一連の会談は戦争回避へ確かな道を開くものになる可能性がある。戦争となれば韓国が最も打撃を受けることになる可能性があり、それを回避するには対話しかないというのが彼の考えだ。

韓国は核兵器を保有しておらず、防衛面では同盟国アメリカの圧倒的な軍事力に依存している。一方の北朝鮮は核兵器を保有している。いざ戦争となってこれらの核兵器が使用されれば韓国は壊滅的な被害を受け、数分以内に数百万人の命が奪われかねない。

「今は韓国側に気運が向いている」とニルソンライトは言う。「介入を控え、交渉を進めさせるというアメリカの判断は賢明だ」

トランプ政権と金政権の間の非難の応酬も落ち着いてきたようだ。ドナルド・トランプ米大統領は「適切な条件下でなら」と条件付きながら、対話に応じる姿勢を示した。

韓国の(最も影響力の大きな)友好国である中国もまた、米朝が対話を始めることが朝鮮半島の安全保障にとって重要だと考えている。ロイター通信の報道によれば、北朝鮮外務省の報道官は国営メディアに対して「我々は対話を懇願することもないし、アメリカが騒いでいる軍事的な選択肢から逃げることもない」と言ったが、ミサイル発射実験を盛んに実施していた2017年の米朝両国の脅しの応酬に比べれば穏やかだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB利下げ支持、今後2会合で─蘭中銀総裁=ブルー

ワールド

焦点:トランプ米政権、結束した敵対勢力に直面 外交

ビジネス

モルガンSのトップバンカー賞与、アジアで最大50%

ビジネス

日経平均は3日続伸、ハイテク株が指数けん引 取引一
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 8
    トランプ新政権はどうなる? 元側近スティーブ・バノ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    米アマゾン創業者ジェフ・ベゾスが大型ロケット打ち…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中