最新記事

北朝鮮情勢

南北首脳会談に動き出した朝鮮半島、米朝対話は実現するか

2018年3月6日(火)16時17分
シェーン・クロウチャー

「北朝鮮は決して認めないだろうが、彼らはアメリカを少し挑発しすぎて危険な状況に陥りつつあることを懸念しており、それがこの変化の一因ではないか」と、2000年代初頭に在北朝鮮英大使館の開館に尽力した元外交官のジム・ホーアは言う。

一方トランプ政権側は、冬季オリンピックでマイク・ペンス副大統領が北朝鮮代表の金栄南最高人民会議常任委員長との握手を拒絶するという外交的なミスを犯した後、我に返ったようだとホーアは指摘。そのせいで今、北朝鮮との対話のチャンスに対して以前よりわずかながらオープンな姿勢になっているように見えるという。

この計画的な「冷たい挨拶」は「双方による強がり」が招いた結果だと、シンクタンク、国際戦略研究所アメリカ支部のマーク・フィッツパトリック事務局長は言う。「制裁が北朝鮮経済をますますひっ迫させるなか、北朝鮮側が、大統領よりも下位レベルでの会談につながるような譲歩を提案してくる可能性もある」

だがトランプが突き付けた非核化という条件については「北朝鮮側が検討することはほぼあり得ない」とホーアは言う。より現実的なのは北朝鮮が核兵器や特定の原料の生産に上限を設けることに同意するという、1994年の米朝枠組み合意に近いものだろうと彼は言う(同合意でアメリカは北朝鮮から、原子炉の建設を凍結する合意を取りつけた)。

対話実現には数々の障害

米朝間の合意には、北朝鮮に対する制裁の緩和が伴う可能性がある。国連、アメリカと欧州連合(EU)はいずれも、核弾頭を搭載でき米本土に到達可能な大陸間弾道ミサイルの開発を推し進めるなか、2017年に繰り返しミサイル発射実験を行ったことを理由に、北朝鮮に制裁を科している。

「北朝鮮側が主張するように、彼らはこれらの兵器の開発で大きな進展を遂げているため、我々が望み得る最大の合意は計画の凍結だ」とニルソンライトは言う。

だが、北朝鮮の核に何らかの上限を科せば、必然的に彼らが核兵器を保有していることを正式に認めることになる。ならず者国家に国際舞台でより大きなステータスを与えることは、とくに周辺諸国にとって最も望ましくないことだ。

今回、平壌で開催された南北会談から、金政権が核開発計画をはじめとする重要な問題において、どれだけ譲歩する意思があるかが判明することが期待されている。

「北朝鮮にどこまでの提案をする意思があるのか、まだ分かっていない。南北朝鮮の対話によって、もしかしたらその点について明確な情報が幾らか引き出されるかもしれない」とニルソンライトは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化

ビジネス

デジタルユーロ、大規模な混乱に備え必要=チポローネ

ビジネス

スウェーデン、食品の付加価値税を半減へ 景気刺激へ

ワールド

アングル:中ロとの連帯示すインド、冷え込むトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中