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AIデータ検索が見つける難病治療薬

2018年3月14日(水)17時00分
ケビン・メイニー(本誌テクノロジー・コラム二スト)

そうしているうちに、ひと握りの専門家しか読まない博士論文を書いても、自分が望むような影響力は生み出せないと思うようになった。チャンの父親は70年代の中国で民主化運動に加わり、80年代にアメリカに逃れた人物。彼女も活動家的な精神の持ち主だ。自分の研究を商業化すべきだと考えた。「博士課程修了まで3カ月というときに中退したので、両親にずいぶん怒られた」と振り返る。

生物医学分野のエンジニア、ジェーソン・チェンと共同でバージを設立。シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル、Yコンビネーターの支援を受け、15年には別の投資会社から総額400万ドルの資金も調達した。

バージは神経科学者やコンピューター科学者を雇って、最先端のAIを開発させ、神経系の病気に関わる遺伝子の相互作用を解明しようとしている。それを突き止めた後は、ソフトウエアを使って、関連する遺伝子全てに作用する物質を探す。この方法なら、従来のラボ実験を1件設計するのに要する時間で、何百種類もの候補物質を調べることができる。

AIの活用でカギを握るのは、大量のデータだ。その点、遺伝子検査が安価で手軽になり、データがふんだんに手に入る時代になった。バージは大量の遺伝子データをAIに与えるために、コロンビア大学など4つの大学のほか、米国立衛生研究所(NIH)、スクリップス研究所、ドイツのドレスデン工科大学と提携も結んだ。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療薬の臨床試験を5年以内に開始できるだろうと、チャンは言う。「1つの病気の治療薬が見つかれば、その方法論をほかの病気に広げていける」。バージのような企業がAIに基づく新薬開発に磨きをかけていけば、アルツハイマー病などの神経系の病気の治療薬が早期に発見されるかもしれない。

製薬大手も無視できない潮流

それを目指している企業は、バージだけではない。カナダのトロント大学の研究者たちは、スタンフォード大学、IBM、製薬大手メルクなどと組んでアトムワイズという会社を立ち上げた。

同社は機械学習を活用して、新薬候補の物質が体内の標的分子とどのように作用し合い、結び付くのかを解明しようとしている。それにより、ラボ実験を行わずに、有望な物質を見いだそうというのだ。これが実現すれば、新薬開発は大幅に加速する。また、IBMの研究チームは、AIを用いて薬品の副作用やほかの効能を明らかにする方法も開発しようとしている。

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