最新記事

認知症

「血糖値が高い人ほど認知機能が低下しやすい」との研究結果

2018年2月2日(金)18時20分
松岡由希子

血糖値が高い人ほど認知機能が低下しやすい DebbiSmirnoff-iStock

<英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究によると、血糖値が高い人ほど、認知機能が低下しやすいことがわかった>

認知症と糖尿病との関連については、長年、様々な研究がすすめられてきた。2011年には、九州大学の清原裕博士の研究チームが「糖尿病の人は、血糖値が正常な人に比べて1.74倍も認知症にかかりやすい」との研究結果を明らかにしている。

糖尿病でなくても血糖値が高い人ほど認知機能が低下しやすい

英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究プロジェクトは、2018年1月、欧州糖尿病学会(EASD)の学会誌「ダイアベートロジア」において、英国人の高齢者5,189人を対象とする研究結果を発表した。

これによると、糖尿病と診断されているかどうかにかかわらず、過去1ヶ月から2ヶ月の平均血糖値を表わす「HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)」のレベルが高い人ほど、認知機能が低下しやすいことがわかったという。

認知機能の低下の進行を緩和させる可能性

この研究プロジェクトでは、50歳以上の英国人の健康・社会・福祉・経済にまつわる状況を2002年から2年ごとに調査した高齢者パネルデータ「ELSA」から5189人を抽出し、2004年から2014年までの合計5回の調査データを分析。対象者の平均年齢は65.6歳で、全体の55.1%が女性であった。

その結果、どの対象者も加齢とともに認知機能が低下していたものの、血糖値が正常な人に比べて、糖尿病または前糖尿病(糖尿病予備軍)の人のほうが、認知機能が低下しやすいことが明らかとなった。とりわけ、認知機能の低下は、「HbA1c」の数値と直接的な関連が認められたという。

これらの研究結果は、「HbA1c」を用いて糖尿病と認知機能の低下とを関連づける世界初の成果として評価されている。

また、糖尿病かどうかにかかわらず、「HbA1c」の数値と認知機能の低下との相関関係を示したことは、糖尿病の発症を遅らせたり、血糖コントロールすることによって、認知機能の低下の進行を緩和させる可能性を示唆するものともいえるだろう。

研究プロジェクトでは、今後、糖尿病患者の血糖コントロールが認知機能の低下にもたらす長期的な効果について、さらに研究をすすめていく方針だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中