最新記事

セクハラは#MeTooで滅ぶのか

セクハラ・性暴力に「俺は無関係」と言えない理由

2017年11月29日(水)16時18分
大橋 希(本誌記者)

写真は本文と関係ありません AH86-iStock.

<「#MeToo」を合言葉にセクハラ告発が世界に拡大中だが、多くの日本人男性にとっては無関係な問題――本当にそうだろうか。世代間の差や日本に特有の難しさも含め、「ホワイトリボンキャンペーン・ジャパン」の多賀太・共同代表に聞いた>

米ハリウッドから始まり、業界や国境を超えて広がっている「#MeToo(私も)」。セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)や性的暴行に抗議する(主に)女性たちの告発だ。
 
この問題は多くの男性にとっては無関係に思えるかもしれないが、実際はどうなのか。男性主体で女性への暴力防止に取り組む啓発運動「ホワイトリボンキャンペーン・ジャパン」の共同代表を務める多賀太(関西大学文学部教授)に話を聞いた。

――DV(配偶者・恋人間の暴力)や性暴力の被害者は、圧倒的に女性が多い。多くの男性は加害者でもないだろうから、どうしても他人事になりがちだ。

まずは、「男性が加害者、女性が被害者」と捉えるのをやめて、被害に遭った人たちは男性にとって「大切な人」なんだと分かってもらうことが重要だ。

もしも自分の娘や妻や恋人、母親や友人や同僚が被害者になったらどうか? 例えば教育関係者であれば、自分の生徒がそういう目に遭ったら? 自分の身近で大切な人である女性がこれだけ被害に遭っているのに、他人事で済ませられるのかと考えてもらう。

もう1つは、あなただって被害に遭うかもしれないということ。多くの男性は自分が被害者になることを想定できないだろうが、そんなことはない。女性からセクハラを受けることもあるだろうし、同性間のセクハラや性暴力もある。もう少し広げてパワハラの被害を想像してみてもよい。何らかの嫌がらせを受ける可能性があるとき、同じように苦しむ人を放っておいていいのかということだ。

――ハリウッドでセクハラ問題が持ち上がったときは、「かつてはそういう文化だった」とも言われた。若い世代では「そうしたことは許されない」と意識が変わってきているようだが、日本でも世代間の差はあるだろうか。

それは感じる。私(48歳)は青年期になって初めてセクハラという言葉を聞いた。DVという言葉を知ったのは大人になってからだ。私よりずっと若い世代は、そういうこと(DVやセクハラ)はいけないと子供の頃からどこかで見たり聞いたりする機会が確実に増えているだろう。

もちろん世代内での個人差は大きいし、リベラルなことを言っている若者世代でも非常に古風な面があることもある。それでも性差別や性暴力の問題に敏感な男性は若い世代ほど多いと感じる。

【参考記事】セクハラ告発#MeTooは日本にも広がるか

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃

ワールド

シリアで米兵ら3人死亡、ISの攻撃か トランプ氏が

ワールド

タイ首相、カンボジアとの戦闘継続を表明

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 10
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中