最新記事

パスポートランキング

パスポート番付でアメリカが凋落

2017年11月16日(木)17時50分
カルロス・バレステロス

Mistikas/ISTOCKPHOTO

<わずか2年で世界トップから6位へ転落。トランプ政権下でアメリカのブランド力は落ち目の一途?>

かつて多くの移民にとって、アメリカ国籍は夢と自由の象徴だった。だがトランプ政権が「イスラム教徒の入国禁止」や「就労ビザ取得要件の見直し」を声高に訴えるようになって以来、その「ブランド力」は落ち目の一途をたどっている。

同時にパスポートの威光も急速に弱まりつつある。カナダの金融コンサルティング会社アートン・キャピタルが10月25日、毎年恒例のランキング「パスポート・インデックス」を発表したが、アメリカは6位。わずか2年前には首位だったのを考えると劇的な転落だ。

このインデックスは199カ国・地域を対象に、ビザなしで渡航できる相手国の数でパスポートをランク付けしたもの。トランプ政権の発足後、トルコや中央アフリカ共和国はアメリカ人のビザなし入国を停止。3月には、欧州議会が欧州委員会に対し、EU域内を訪れるアメリカ人にビザ取得を義務付けるよう要請する決議を可決した(しかし同意委員会はその後、決議に従わないとした)。

一方、米国務省は9月にアメリカ人の北朝鮮渡航を禁じた。イランやシリアなど、イスラム教徒が大多数を占める国々の市民に対する入国禁止令には、執行差し止めや異議の申し立てが相次いでいる。

15年のランキングでは、アメリカはイギリスと並んで首位だったが、16年は4位に落ちた。さらに今回は6位へ転落し、首位のシンガポールをはじめベルギー、日本、スウェーデンなど18カ国の後塵を拝している。

他のランキングでも、アメリカの地位は揺らいでいる。ヘンリー&パートナーズ社による17年のランキングでは、ビザなし渡航自由度でトップはドイツ。2位にはスウェーデンが続き、アメリカはフィンランド、イタリアなどと並び3位だった。

一方でビザなし渡航、海外移住者への税制、二重国籍の可否、国のイメージなどを指標とする「ノマド・パスポート・インデックス」では、スロベニアと並んで上から35カ国目だった。

一般的に、所得水準が高い先進国のパスポートは高く評価され、逆にアフガニスタンやシリアのように常に危険と隣り合わせの国は順位が低くなる傾向がある。しかしアメリカの場合、ドナルド・トランプというリスク要因がある限り、さらなる転落が待っているかもしれない。

<本誌2017年11月14日発売最新号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU外相、シリアの宗派間暴力への懸念表明 過激主義

ワールド

米、中国IT企業に制裁 人身に危害及ぼすマルウエア

ワールド

世界の航空業界、25年に収入総額初の1兆ドル突破へ

ワールド

イスラエル、シリア南部に防衛地帯設置へ ゴラン高原
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新研究が示す新事実
  • 4
    無抵抗なウクライナ市民を「攻撃の練習台」にする「…
  • 5
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの…
  • 8
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 9
    ジンベエザメを仕留めるシャチの「高度で知的」な戦…
  • 10
    ティラノサウルス科の初記録も!獣脚類の歯が明かす…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 5
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 6
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 7
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 8
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 9
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 10
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中