最新記事

精神薬理学

「酒に酔うと外国語がうまくなる」:欧州の研究者らが実験で確認

2017年10月23日(月)18時30分
高森郁哉

Weekend Images Inc.-iStock

<英リバプール大学とオランダのマーストリヒト大学が行った研究で、適度にアルコールを摂取すると、外国語を話す能力が向上するとの研究成果を発表した>

「酒の上のから元気」を意味する英語の慣用句に"Dutch courage"(直訳すると「オランダ人の勇気」)という言葉がある。

これは17世紀ヨーロッパの三十年戦争の頃、イングランド兵が戦闘前にオランダ製のジンを飲んだ故事に由来するが、英国とオランダの共同チームはこのほど、飲酒が脳に及ぼす影響により外国語を話す能力が向上するとの研究成果を発表した。少なくとも外国語の話者には、酒の上のから元気がプラスにはたらくと言えそうだ。

テストの手法

英リバプール大学の研究者らがオランダのマーストリヒト大学と共同で行った研究で、英国精神薬理学会が発行する学術誌に論文が掲載された。

研究チームによるテストは、ドイツ語を母国語とし、最近オランダ語の会話と読み書きを学んだマーストリヒト大の学生50人を対象に実施。被験者は、無作為抽出によりアルコール度数5%のビールかノンアルコール飲料を飲んでから、実験者とオランダ語で会話した。ビールの量は被験者の体重によって調整され、たとえば70kgの男性には460mlが提供された。

この会話は録音され、オランダ語を母国語とする2人が採点した。採点者は被験者がビールを飲んだかどうかを聞かされなかったが、ビールを飲んだ人のほうがしらふの人よりも採点が高くなる有意の傾向がみられ、特に発音が向上したという。なお、被験者にはオランダ語の能力の自己採点もしてもらったが、自己採点にアルコールの影響はみられなかった。

アルコールが脳に及ぼす作用

リバプール大によると、アルコールは認知機能と運動機能を損なうことが知られている。記憶力、注意力、不適切な行動を抑制する能力を含む「実行機能」が特にアルコールに敏感であることから、外国語を話すときに重要な実行機能が酒の影響を受けると、会話の能力が損なわれるとの予想もありえる。しかし実際には外国語の会話力の向上がみられたのは、「不安を軽減するアルコールの作用が有効にはたらいた可能性がある」としている。

研究者らは、アルコール摂取量が少ないことも重要な点であり、飲み過ぎてしまうと外国語能力にプラスの効果は見込めくなりそうだと指摘。また、50人という被験者数が少ないことも認めており、さらに大勢をテストする必要があると述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ロシア原油への制裁緩和を検討 世界原油高に対応

ワールド

トランプ氏、イランとの戦争「ほぼ完了」 想定より早

ワールド

イラン高濃縮ウラン、イスファハン核施設でなお保管=

ビジネス

トランプ米大統領、買収争奪戦中にネトフリとワーナー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 10
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中