最新記事

中国共産党

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想とは?

2017年10月23日(月)08時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

だから2012年11月8日の第18回党大会開幕演説で、胡錦濤は最後の総書記としての演説を「腐敗問題を解決しなければ党が滅び国が滅ぶ」と締めくくり、11月15日、新しく総書記になった習近平は、その就任演説で胡錦濤を同じ言葉を繰り返した。

習近平が反腐敗運動に全力を尽くせるように、胡錦濤派全ての権限を習近平に渡し、習近平はその期待に応えて激しい反腐敗運動を展開した。

腐敗の頂点に立つのは江沢民とその大番頭の曽慶紅だ。

恩を仇で返そうというのか!

18日、3時間24分にわたる演説をしていた習近平が、「反腐敗運動」に触れ始めたとき、なんとCCTVは江沢民と曽慶紅の顔を映し出したのである。

江沢民は怨念を込めた憮然たる表情で上目づかいにうつむき、曽慶紅は白髪一本残していないほどに真っ黒に染めた頭をシャキッと持ち上げ、「さあ、来るなら来い!」と言わんばかりの闘志に燃えた表情で習近平を睨みつけていた。

それもそのはず。

習近平をこんにちの座に導いたのは、まさに江沢民と曽慶紅、この二人だったからである。

特に曽慶紅は、習近平が清華大学を卒業して初めて仕事を始めたときからの知り合いで、習近平は曽慶紅を「慶紅兄さん」と呼んで慕い、曽慶紅はどこまでも習近平を支えてきた。2007年に上海市の書記に習近平を推薦したのも曽慶紅なら、同年、江沢民を説得して胡錦濤時代のチャイナ・ナイン(中共中央政治局常務委員会委員9人)にねじ込んだのも曽慶紅と江沢民だったからだ。

その恩を仇で返そうというのか――!

二人の怨念に満ちた表情を前に、反腐敗運動の成果を披露し今後も推進していくことを宣言した習近平の表情もまた、一歩も譲っていなかった。それはまさに現在の中国の実態を映し出す象徴のような図柄であった。

その他、強軍大国、経済大国に関する演説内容と日本との関係に関しても考察したいが、長くなり過ぎたので、またの機会に譲ることとしたい。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:バフェット後も文化維持できるか、バークシ

ビジネス

バフェット氏、バークシャーCEOを年末に退任 後任

ビジネス

OPECプラス、6月日量41.1万バレル増産で合意

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中