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習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想とは?

2017年10月23日(月)08時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

その毛沢東時代、ひたすら毛沢東の権力闘争と政治運動に明け暮れて、毛沢東が逝去し文化大革命が終焉した時には、中国経済は壊滅的打撃を受けて、まるで廃墟のようだった。

そこで1978年12月、鄧小平は「改革開放」を宣言して、「富める者から先に富め(先富論)」を唱えて、「金儲け」を奨励した。

それまで金儲けに走った者を「走資派」と呼んで徹底して罵倒し逮捕投獄して2000万人以上が犠牲になっている。人民はその恐怖の中で生きてきたので、誰も鄧小平の「先富論」を信じず、金儲けをしろと言っても尻込みして、なかなか動かなかった。また保守的な幹部である「老人組」からは「社会主義に反する」と批判されたり、中国という国家が「中国共産党が一党支配する社会主義国家である」ことにそぐわないとして激しい論争が起きた。

そこで鄧小平は金儲けに走る中国を「特色ある社会主義国家」とし位置付けて理論武装し、人民や老人組を納得させたのである。

この「特色」二文字によって、「社会主義国家でありながら資本主義国家と同じことをしているではないか」という矛盾に「解答」を与え、かつ「社会主義国家」であることを維持することにした。つまり「中国共産党による一党支配体制だけは維持して、資本主義国家よりも資本主義的に金儲けをする」ことに正当性を与えたのである。それからというもの人民は全て「銭に向かって進み始めた」!

この強引な論理武装から生まれたのが「底なしの腐敗」である。

習近平時代は腐敗との闘い

こうして江沢民の「三つの代表」論(資本家でも党員になっていい)という理屈によって利権集団と中国共産党の幹部が「賄賂、汚職、口利き...」などによって癒着して生まれたのが「腐敗大国、中国」である。

鄧小平が国家を三大ポジション(中共中央総書記、中央軍事委員会主席、国家主席)を江沢民の一身に与えたのは、こうすれば三大ポジションの間で争いが起きないだろうと考えたからだが、そうはいかなかった。そもそも中国の「文化」はそんなに「清廉」ではない。腐敗によって栄え、腐敗によって亡んできたのが中国の歴代王朝だ。

「皇帝」が社会主義体制によって「総書記(紅い皇帝)」になろうと、中国のこの「腐敗文化」は数千年に及ぶ深い土壌に染み込んでいる。三大ポジションを江沢民が手にすることによって、この「腐敗文化」は活火山の爆発のように中国の全土を覆い、手の付けようがなくなっていた。

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