最新記事

中国共産党

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想とは?

2017年10月23日(月)08時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

もちろん習近平自身が演説で「新時代」の前に「習近平」という個人名を入れるようなことはしていない。

傍証となるフレーズ――「站起来、富起来、強起来!」

24日に発表される党規約に新たに書き加えられる「習近平思想」が「習近平新時代中国特色社会主義思想」であることを証拠づける、もう一つのフレーズがある。

それは習演説の中でひときわ強い印象を与えた「站起来、富起来、強起来!」という言葉だ。

「站起来(立ち上がる)」とは中華民族が(アヘン戦争以来の)長い屈辱の歴史から遂に立ち上がったことを意味し、1949年10月1日に新中国(中華人民共和国)が誕生した日を指す。その日から文化大革命(1966~76年)終息までが、「毛沢東時代」だ。

「富起来(豊かになる)」とは、毛沢東の死後、1978年12月に鄧小平が「改革開放」を唱えてから中国が豊かになり始めた時期を指す。これは「鄧小平時代」だ。

「強起来(強くなる)」とは「毛沢東時代」も「鄧小平時代」も終わり、新たに中国が経済強国、軍事強国として「強国化」した時代で、これを「習近平時代」と位置付けている。

つまり、この「站起来、富起来、強起来!」というフレーズは「時代区分」を表した言葉ということができ、「習近平時代」を「新時代」と位置付けていることを証明する論理構成のキーワードになっている。

事実、習近平は演説で、「わが国が世界の舞台で日増しに中心的な役割を果たすようになった」として、中国という特色ある社会主義国家が発展のモデルとチャンスを多くの国に提供し、人類に益々大きな貢献を続けていく時代になったとしている。

つまり、アメリカに追いつけ追い越せにより、まもなく中国が世界の「ナンバー1」になることを示唆しているということになる。

1949年10月1日に中華人民共和国が誕生したとき、人民は新しく生まれたこの国を「新中国」と称した。「中国共産党がなければ新中国もなかった」という歌が流行り、筆者は毎日、この歌を唄わされながら育った。

その「新中国誕生」に成り代わって「習近平による新時代誕生」という位置づけを、第19回党大会は強調していることになる。

「中国の特色ある社会主義思想」とは何か?

それでは「中国の特色ある社会主義思想」とは具体的に何を指すのかを考察してみよう。

社会主義国家は、平易な言葉でざっくり表現するなら、毛沢東が謳っていたように「金儲けをしない、誰もが平等な(貧乏だけど平等な)社会」ということになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用4月17.7万人増、失業率横ばい4.2% 労

ワールド

カナダ首相、トランプ氏と6日に初対面 「困難だが建

ビジネス

デギンドスECB副総裁、利下げ継続に楽観的

ワールド

OPECプラス8カ国が3日会合、前倒しで開催 6月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中