最新記事

マイノリティ

【写真特集】LGBTQの親を持つ子供たち

2017年10月25日(水)18時00分
Photographs by Gabriela Herman

pplgbtq03.jpg

<Adrian>
感謝祭の日、大学から自宅に帰ると、母親以外のもう1人の女性が暮らしていた。父親は2、3カ月前に家を出ていた。「友達?」って僕が言うと、母は「そう。そういうことなの」って感じで、はっきり言わなかった。たぶん彼女は心の準備ができていなかったのかもしれないし、僕のほうができていなかったのかもしれない。嫌な気持ちはしなかったし、裏切られたとも感じなかった。でも大喜びしたわけでもない。一歩下がって、自分の中で処理する必要があったんだと思う。母は、僕が大学に入るまで待ったんだろう。「息子は家を出て、自分のすべきことをしている。私が自分の人生を生きる時が来た」って感じだったのかな。


pplgbtq05.jpg

アメリカ人はすぐに人を判断しようとする
母親が2人いるとか、人種や民族のこととか
自分の場合は母のことより、
人種が問題になることが多い

<Zach>
僕はニューオーリンズで生まれた。ベトナム人の母パトリシアは16歳で、スペイン人で黒人の父チャールズは17歳だった。僕はバーバラとキムの養子になった。つまり僕には2人の母親がいる。母親のことで最初に問題が起きたのは小学3年生のとき。みんなに「ママが2人なんて、超羨ましいね」と言われた。子供にとっては、レズビアンやゲイなんて「どうでもいいこと」って感じだった。正直言って、そのことを心配し過ぎる親がいると思う。当時、「なぜあなたは黒人で、彼らは白人なの?」「なぜあなたはアジア系なの?」と周囲からよく聞かれたのを覚えている。僕は「養子だから」と答えていた。多くの子供にとっては、それで十分だった。


pplgbtq06.jpg

<Molly>
15歳になる前の春、父親がトランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)だと私たちに打ち明けた。母はたぶん結婚早々か、1、2年たった頃から分かっていたと思う。父が私と姉妹、いとこを台所に連れていって、そのことを話した。私たちはとても進歩的な家族だったけど、それでも父のことは奇異に思えた。たしか1年後に両親は別れた。その頃には父は変わり始めていて、私たちに会いに来るときは男性の服装にピアスやネイル。名前もオースティンからビビアンに変わった。私が最もつらかったことの1つは、父が家族の中で自然に振る舞えず、家族の一員と思えずにいたようだと、しばらくしてから分かったこと。


pplgbtq07.jpg

幼稚園の先生とけんかしたことがある
父の日のカードを作ったとき、父はいないと
言い張る私を先生は信じてくれなかった

<Jamie>
母は私が子供の頃から、大人扱いしてくれた。私たちは友達みたいで、それでうまくいっていた。私が10歳の頃に大切な話をしたと、母は言う。全てを細かく話して、私は「ちょっと待って、あなたはレズビアンということ?」って言ったらしい。「あなたは怒った。ショックを受けていた」と母は言うけど、私は全然覚えていない。記憶力はいいのに、そのときのことは頭から遮断したのだろう。幼稚園のときには友達に、父がいないと話したのを覚えている。「どうして?」と聞かれるから、「ママが私を生むのをお医者さんが手伝ってくれた」と答えた。


撮影:ガブリエラ・ハーマン
米ニューヨークを拠点として、旅、食、ライフスタイルをテーマの広告写真や、ニューヨーク・タイムズ、ワイアードなどの新聞・雑誌を中心に活躍している。本作は、新刊写真集『The Kids ― The Children of LGBTQ Parents in the USA 』からの抜粋

Photographs by Gabriela Herman from the book "The Kids: The Children of LGBTQ Parents in the USA" published by The New Press

[本誌2017年10月24日号掲載]

「Picture Power」の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米株から日欧株にシフト、米国債からも資金流出=Bo

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、4月改定49.0 32カ月ぶ

ビジネス

仏製造業PMI、4月改定値は48.7 23年1月以

ビジネス

発送停止や値上げ、中国小口輸入免税撤廃で対応に追わ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中