最新記事

北朝鮮問題

バノン氏の「トランプは習近平を誰よりも尊敬」発言とトランプ国連演説の整合性は?

アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席(7月、独ハンブルクで) Saul Loeb-REUTERS

9月12日、辞任したバノンが講演で「トランプは世界のどの首脳よりも習近平を尊敬している」と述べた。19日、国連総会でトランプは北朝鮮を「完全破壊」と発言。これは習近平の意向とは対立する。整合性は?

スティーブ・バノン氏の香港での講演――ブルームバーグ

すでにトランプ政権から離れた(事実上、更迭された)元主席戦略官のスティーブ・バノン氏が、9月12日、香港で開かれた講演で、「トランプ米大統領は中国の習近平国家主席を世界の他のどの首脳よりも尊敬している」と述べた。アメリカのブルームバーグが"Trump Respects China's Xi More Than Other Leaders, Bannon Says"というタイトルで伝えた。

日本語では「トランプ米大統領は中国国家主席を他の首脳より尊敬――バノン氏」として、英文の一部が抜粋してある。

それによれば、中国最大の国営証券会社、中信証券(CITIC証券)の海外部門であるCLSAが主催したフォーラムで、バノン氏は「トランプ大統領と習主席の関係は非常に強力で、(トランプ)大統領が中国主席よりも尊敬するリーダーはいないと思う」と述べたという。このフォーラムは報道陣には非公開だったが、参加した6人がバノン氏の発言を明らかにしたとのこと。

トランプは習近平が気に入っている

筆者は『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』を書いている内に、最初はトランプが習近平に仕掛けてくる数々のディール(取引)に関して「褒め殺しか」、「世紀の大芝居か」と位置付けていたのだが、終いには、「いや、トランプは本当に習近平のことが気に入っているのかもしれない」という思いに追い込まれていった。

常に「なぜだ?」を追い求めて、トランプの言動を記している内に、どうしても「トランプが習近平のことを気に入っている」と考えないと、整合性がつかないところに辿り着いてしまうのだ。拙著のp.92に、その戸惑いを記した。

それが今ごろになって、トランプを大統領に仕立て上げた黒幕であり、トランプを陰で操っていた一人であったバノン氏によって証言されたのだから、非常にありがたい。これ以上の信憑性はないだろう。

「トランプ・習近平」電話会談

トランプは9月18日、習近平と電話会談をした。中国の中央テレビ局CCTVや中国共産党新聞が伝えた。

それによれば、両者は互いに相手を褒め称え、予定されているトランプ訪中について話し合ったという。北朝鮮問題に関しては、「現在の朝鮮半島情勢に関して意見を交換した」としか報道していない。

一方、大陸以外の中文メディアによれば、「北朝鮮に対し国連制裁を通して圧力を掛け続けることについて意見を交換し、(習近平は)承諾した」とのこと。

さらに注目すべきは、トランプが習近平に「米中ともそれぞれ重要な国内日程がある。それが順調に進むことを祈っている」と電話で伝えたことで、中国における重要な国内日程とは、言うまでもなく10月18日に開催される第19回党大会のことである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1万件減、継続受給件数は21年1

ワールド

米国防長官、イランの濃縮ウラン移動情報認識せず ト

ワールド

ロシア軍、ウクライナ東部でリチウム鉱床近くの集落を

ビジネス

米国株式市場・午前=S&P・ナスダック過去最高値に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 10
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中