最新記事

テロ対策

中国、ウイグル族にスパイウエアのインストールを強制

2017年7月26日(水)16時30分
ベンジャミン・フィアナウ

新疆ウイグル自治区カシュガルでスマートフォンを持ったウイグル族の男性に話しかける警察官(2017年6月) Thomas Peter-REUTERS

<中国・新疆ウイグル自治区に漢族を大量に送り込み、イスラム系少数民族ウイグル族を迫害してきた中国政府が今度は、住民に官製スパイウエアのインストールを強制。拒否したり削除したりすれば連行されるという>

中国の新疆ウイグル自治区に暮らすイスラム系少数民族のウイグル族が、スマートフォンにスパイウェア・アプリをインストールすることを強制されている。その狙いは、中国政府の監視当局が「テロリストや不法な宗教活動に関連する」コンテンツを発見できるようにすること。

「ラジオ・フリー・アジア」の報道によれば、ウイグルの首府ウルムチの中国政府当局は2017年4月、「百姓安全」と呼ばれるアプリを開発したという。このアプリは、政府が市民の携帯デバイスをスキャンし、「テロリストのプロパガンダ」を発見できるようにするためのものだ。

ウイグルに住むウイグル族は7月中旬、チャットアプリ「微信(ウィーチャット)」を通じて、地元警察からの通達を受け取った。通達の内容は、「監視アプリ」をインストールし、抜き打ち検査に備えるよう求めるものだった。

警察は、路上での職務質問で、アプリがインストールされているかどうかをチェックし始めている。微信経由で送られたメッセージは、中国語とウイグル語で書かれていた。

セキュリティ情報サイト「ブリーピング・コンピューター」の報道によれば、問題のアプリは、ユーザーのファイルのログを作成し、既知のテロリストの動画やコンテンツを集めたデータベースと照らし合わせるもの。また、ユーザーの「微博(ウェイボー)」や微信のデータベースのコピーを作成し、WiFiログイン情報とともに政府のサーバーにアップロードする機能もある。

ブルカの着用も禁止

アプリをインストールしなかったり、あとで削除したりした人は、最長で10日間にわたって警察に拘束される可能性があると、地元メディアは報じている。アンドロイド携帯の利用者は、警察の送信した微信メッセージにあるQRコードをスキャンし、自動的に百姓安全アプリをダウンロードしてインストールするよう求められている。

当局によればこのアプリは、スマートフォンに保存された「テロリストや不法な宗教活動に関連するビデオ、画像、電子書籍、電子ドキュメントを自動的に検知する」ものだという。

トルコ系民族であるウイグル族の人口は800万人ほどで、ウイグルの人口の約半数を占めている。中国のほかの省では、今回と同様の対策はとられていない。ウイグルでは近年、デモや衝突がたびたび起きており、数十人が死亡している。

2014年5月にはウルムチでテロ事件が発生し、容疑者4人を含む43人が死亡した。数十年にわたって中国当局によって行われてきた弾圧と殺戮が対立の原因となっているという非難の声もある。

この地域ではテロ組織ISIS(自称イスラム国)の存在感は薄いとされているが、中国政府は、ブルカなどのイスラム伝統衣装の公共の場での着用を禁じるなどの対策をとっている。

ニュースメディア「マッシャブル」が2016年に報じたごころでは、中国政府は、国外のメッセージングアプリを利用するウイグル族の電話サービス遮断しているという。「ワッツアップ」や、ロシア製メッセンジャーアプリ「テレグラム」などはすべて監視対象だ。(International Business Times)

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米9月PPI、前年比2.7%上昇 エネルギー高と関

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、10月は1.9%上昇 ローン

ビジネス

米9月小売売上高0.2%増、予想下回る 消費失速を

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中