最新記事

経済

中国マネーが招くベネズエラの破綻

2017年7月8日(土)18時30分
クリストファー・バルディング(北京大学HSBCビジネススクール准教授)

生活必需品の多くを輸入に頼っていたベネズエラ。原油価格の下落で外貨準備高が激減し、今やスーパーの棚はガラ空きだ Carlos Becerra-Anadolu Agency/GETTY IMAGES

<資源確保と影響力の拡大を目指す中国の「金融外交」が途上国を苦しめる>

「ベネズエラと中国。この2国の経済に共通するリスクは?」と聞かれたら返事に困るだろう。

ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は前任者ウゴ・チャベスの遺志を継いで「ボリバル革命」の旗を掲げ続けているが、頼みの綱の原油価格は一向に上がらず、経済危機は悪化の一途をたどっている。油田掘削装置の補修費や労働者への賃金の支払いもままならず、原油生産はストップ。深刻な物資不足で国民の怒りはピークに達し、マドゥロ退陣を求めるデモが全土に広がっている。

一方、地球の反対側の中国ではきらびやかなショッピングモールに買い物客があふれている。

明暗がくっきりと分かれる両国の経済だが、実は共通の「爆弾」を抱えている。中国の習近平(シー・チーピン)国家主席が膨大な資金力にものをいわせて影響力を拡大しようと「金融外交」を展開しているからだ。

中国のたくらみは相手国ばかりか、最終的には中国にも手痛い打撃を与えかねない。ベネズエラ経済の崩壊がそれを示す実例となるだろう。

【参考記事】ベネズエラほぼ内戦状態 政府保管庫には大量の武器

99年にチャベスが反米・社会主義路線を掲げて政権の座に就くと、中国は彼をイデオロギー的な盟友と見なし、ベネズエラにせっせとカネを貸し始めた。

公式には中国の融資は資金の使途や返済に条件の付く「ひも付き」融資ではないが、現実は玉虫色だ。00年以降、中国は新たな市場の開拓と資源の確保を目指して積極的に対外投融資を始めた。

石油を確保しつつ中南米に友好国をつくるという中国の思惑は、アメリカと縁を切って貿易相手国を多様化したいというベネズエラの思惑とぴたりと合致した。だからと言って中国が金利をまけてくれるわけではなく、融資条件は中国に非常に有利なものとなった。

07~14年に中国はベネズエラに630億ドルを融資。この金額は同時期の中国の中南米諸国への融資総額の53%に当たるが、その気前のよさには裏がある。返済は石油で行うことになっていたのだ。

融資契約の大半が結ばれた時期に1バレル=100ドル強で推移していた原油価格は、16年1月には1バレル=30ドル近くまで下落。こうなるとどう頑張っても返済が追い付かない。今やベネズエラは契約当初の2倍の原油を中国に輸送する羽目になっている。

MAGAZINE

特集:5Gの世界

2019-3・26号(3/19発売)

超高速大容量の通信でネット利用が快適に...... どころで済まない5Gの潜在力と激変する未来の姿

人気ランキング

  • 1

    日本の重要性を見失った韓国

  • 2

    韓国のPM2.5が危機的状況で、比較的空気の綺麗な日本に注目が集まる

  • 3

    500年間誰も気づかなかったダビデ像の「目の秘密」【名画の謎を解く】

  • 4

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

  • 5

    北斎は幽霊っぽさを出すために子供の頭蓋骨を使った…

  • 6

    日本よ!「反韓・嫌韓」は時間の無駄だ

  • 7

    モデルの乳がんを、レンブラントは意図せず描いた【…

  • 8

    人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕…

  • 9

    自殺者数、米軍兵力、初任給... 韓国のリアルを10の…

  • 10

    「韓国にまともな民主主義はない」アメリカも抱く誤…

  • 1

    日本の重要性を見失った韓国

  • 2

    韓国のPM2.5が危機的状況で、比較的空気の綺麗な日本に注目が集まる

  • 3

    モデルの乳がんを、レンブラントは意図せず描いた【名画の謎を解く】

  • 4

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 5

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう…

  • 6

    500年間誰も気づかなかったダビデ像の「目の秘密」【…

  • 7

    謎のシャチが見つかった?未知の4種目の可能性

  • 8

    自殺者数、米軍兵力、初任給... 韓国のリアルを10の…

  • 9

    韓国カフェ:ゴミ対策で使い捨てカップ禁止にしたら…

  • 10

    性転換外科医が患者の性器写真を綿々とインスタに投…

  • 1

    日本の重要性を見失った韓国

  • 2

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 3

    家畜のブタが人食いブタに豹変──ロシア

  • 4

    映画『ボヘミアン・ラプソディ』が語らなかったフレ…

  • 5

    『ボヘミアン・ラプソディ』を陰で支えた、クイーン…

  • 6

    自殺者数、米軍兵力、初任給... 韓国のリアルを10の…

  • 7

    【動画】子犬の「返品」を断られて激高し、殺してし…

  • 8

    【動画】サメを虐待した金持ち息子に軽すぎる刑

  • 9

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 10

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
NWデジタル編集部ほか求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月