最新記事

テロ組織

ISISが生んだ新時代の伝播型テロ

2017年6月19日(月)10時00分
ジェン・イースタリー、ジョシュア・ゲルツァー(元米国家安全保障会議テロ対策担当)

首都ロンドンなど英全土で警戒レベルは最上位に引き上げられた Neil Hall-REUTERS

<仮想コミュニティーで連携させ、指導部からの指示すら必要としない、新時代のテロが増殖する恐怖>

またもや世界は痛ましいテロのニュースに衝撃を受けた。事件が起きたのはイギリス中部マンチェスター。人気歌手アリアナ・グランデのコンサート会場入り口で男が自爆テロを決行し、これまでに22人が死亡した。

事件直後にはテロ組織ISIS(自称イスラム国)が犯行声明を出したが、実行犯のサルマン・アベディはリビア系移民2世で、英治安当局はリビアの過激派組織の関与についても捜査を進めている。

筆者2人がホワイトハウスにいた当時、米政府のテロ対策の主眼はISISなどのテロ組織が直接的にその指揮系統を使って欧米で実行するテロの防止だった。だがその後、ISISが先鞭をつけた手法が大きな懸念材料になった。テロ組織が直接的に関与せずとも、インターネットを通じて世界中のシンパに攻撃を実行させるという手法だ。

今やテロ組織は難民に紛れた戦闘員を送り込まずとも、ネットを利用してやすやすと国境を越え、大きな被害をもたらせる。

これは開かれた欧米社会を揺るがす安全保障上の核心的な問題だ。テロ組織がネットに流す宣伝動画やメッセージに触発された、いわゆるローンウルフ(一匹狼)はテロ組織の指導部に直接コンタクトを取る必要はない。自分たちで攻撃を計画し、準備し、実行する。

これは新たな脅威だろうか。そのとおり。ただし、一般的に言われている脅威とは少し違う。

ISISはローンウルフ型のテロを解き放ったのではない。むしろネットの巧みな活用で、ローンウルフ型テロの終わりの始まりを招いたのだ。

【参考記事】ISIS戦闘員を虐殺する「死の天使」

これを理解するには、ISISがソーシャルメディアを使って新兵募集や過激思想の伝播に革命をもたらしたことを理解する必要がある。さらに、なぜ一部の人々はISISのメッセージに洗脳されやすいかを理解する必要もある。

彼らは社会の中で孤立し、自分の居場所を求めていた人たちだ。ISISの大義のために武器を手にし、トラックで人混みに突っ込み、手製爆弾を製造すれば、コミュニティーの一員になれる。自分は独りぼっちではなく、新たな歴史をつくる勇敢な戦士たちの一員だと思える。

帰属意識がカギになる

ごく普通の市民でも主流のメディアに触れていれば、過激なプロパガンダの一端を目にすることになる。実際、多くのアメリカ人がISISの名を知ったのは14年8月にISISによる人質斬首ビデオの一部がニュースで盛んに流されたからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米労働関連指標を見極め

ビジネス

米11月求人件数、14カ月ぶり低水準 労働需要の減

ビジネス

米国株式市場=S&P500反落、金融株に売り AI

ワールド

トランプ氏の一般教書演説、2月24日の見通し 下院
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 5
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 8
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中