最新記事

インタビュー

リンダ・グラットンが説く「人生100年時代」の働き方

2017年6月8日(木)14時51分
WORKSIGHT

wsLyndaGratton170608-1.jpg

講演会の様子。会場は満員となり、注目の高さをうかがわせた。

「教育」「勤労」「引退」の3ステージからマルチステージへ

より長く働くためには、今の働き方を変える必要があります。今まで、人生のステージは「教育」「勤労」「引退」と3つに分けられてきました。教育期間を終えるとフルタイムで働き、次はフルタイムで引退生活を送るというものです。大学をみな同じ年齢で卒業し、同じような年齢で結婚し、子どもを持って、そして昇進して引退するという予測可能な人生のモデルがあったわけです。

しかし、今後これは成り立ちません。みんなが同じ時期に同じことをする一斉行進の時代は終わり、世界はマルチステージの人生に変わりつつあります。1人ひとりが違った働き方を見出し、また人生のイベントの順序もそれぞれ違ってきます。自分にとって理想的な人生を追い求めていくことになるのです。

人々はより多くのステージを経験することになるでしょう。例えば、旅や留学などを通じて幅広い進路を探る「エクスプローラー(探検者)」、自由と柔軟さを求めて小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」、さまざまな仕事や活動に並行して携わる「ポートフォリオ・ワーカー」などです。そして、こうしたさまざまなステージを行ったり来たりする「トランジション(移行期)」も必要となります。

長時間労働は健康や生産性に悪影響を及ぼすだけでなく、個人的なビジネスを実験的に立ち上げるとか週末に仕事以外の活動に参加するといった、人生のイノベーションを起こすための時間を捻出しにくくなるという弊害も巻き起こします。80歳まで働き続けるには、幾度かの移行が必要であり、そのための時間を確保しなければならないのです。

【参考記事】このままでは日本の長時間労働はなくならない

長寿社会では無形資産が強み。生産性、活力、変身する力を養う。

長く働くために働き方を変えようとするとき、より重視されるのが個人の無形資産の構築です。

資産とは時間を通して価値をもたらすものであり、これまでは主に現金や家財、不動産、株式といった有形資産を指してきました。こうした有形資産は今後ももちろん有用ですが、長寿社会では無形資産を持つことが強みとなります。

無形資産の種類としては3つ挙げられます。1つは生産性を高めるものです。例えば、価値あるスキルの生涯学習、メンタリングやコーチングに寄与するような自分のプラスになる人間関係の維持、そして会社や組織に頼らない自分自身の評判が該当するでしょう。

2つ目は活力の維持です。100歳まで生きる、そして長い年月働けるようにするには当然でしょう。運動や食生活に注意すると同時に、適切なストレスマネジメントの実践も求められます。例えば友人をたくさん作ることも大きな意味があり、孤独で寂しく暮らす人より、仲間と楽しい時間を過ごす人の方が長生きします。

無形資産の3つ目として、変身する力も身につけておきたいですね。長い人生を歩んでいくとき、ずっと同じ人間でいるわけにはいきません。同じ会社に居続けるわけにもいかないし、年を重ねれば体も変化します。70代や80代でも生き生きしている人は、そういう変化についていける人たちです。世界に対してワクワク感を忘れずに変わっていく活力ある人、変身する力のある人こそ長い人生を充実させることができます。

そして変身を遂げるには、まず自分と向き合うことです。組織やグループの一員ではなく、個人として自分を見つめるのです。また、多様性に富むネットワークも変身する力を高めます。特に自分と違う年代、性別、仕事、国の人と交わることが大切です。自分に似た人とばかり交わっていたのでは現状を維持するだけです。いろいろなタイプの人と出会い、ロールモデルを得ることが変化のきっかけになります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

プルデンシャル生命、顧客から着服など31億円 社長

ビジネス

英BBC、ユーチューブ向け番組制作へ 広告収入も視

ワールド

韓国前大統領に懲役5年、上訴意向示す 「非常戒厳」

ワールド

フランス政府、予算協議を来週に延期 可決のめど立た
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑について野次られ「中指を立てる」!
  • 2
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    イランの体制転換は秒読み? イラン国民が「打倒ハ…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 8
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中