最新記事

ペット

インフルエンザからかわいい愛犬を救え

2017年3月17日(金)17時20分
スタブ・ジブ

生ワクチンが実用化されれば注射以外の接種方法が可能になるかもしれない Charles Mann-iStock.

<アメリカで犬の感染が急拡大するなか、痛い注射が不要の犬用生ワクチンの開発が進む。課題はヒトウイルスとの交雑の危険性だ>

愛犬がボールを投げても取りに行かなくなったり、くしゃみや咳、熱があるなら、犬インフルエンザにかかっているのかもしれない。人間や鳥、豚や馬と同様に犬にもインフルエンザがあり、感染は急速に広がっている。

犬インフルエンザのワクチンがアメリカで初めて認可されたのは2009年のこと。アメリカ初の感染例が確認されてから約5年後のことだった。

フロリダ大学のシンダ・クロフォード助教(獣医学)によれば、このH3N8型犬インフルエンザウイルスは、1960年代から馬の間で流行していた馬インフルエンザのウイルスから進化したものだ。もう1つのH3N2型ウイルスは鳥インフルエンザから変異し、中国や韓国、タイで流行した後、15年3月にアメリカで初めて確認された。

犬インフルエンザのワクチンはどれも、死んだウイルスを使った不活化ワクチンで、犬に注射する必要がある。人間のインフルエンザ不活化ワクチンの場合も、2~3週間おいて2回、注射しなければならない上、毎年の接種が推奨されている。ただし、人間用には鼻に噴霧するだけで済む生ワクチンもある。

【参考記事】きょうだいよりもペットが大好き!子どもとペットとの強いつながりが明らかに

「注射針が嫌いなのは犬も同じだ」と、ロチェスター大学微生物学・免疫学部のルイス・マルティネスソブリド准教授は言う。同大学とコーネル大学、英グラスゴー大学の研究チームは先頃、犬用生ワクチンの実用化につながるであろう技術を複数、開発した。

この生ワクチンをマウスに接種した実験では、不活化ワクチンよりも強い免疫反応が得られ、感染と戦う力も強かったという。そして現在、研究チームはH3N2型ウイルスの生ワクチン開発に向けた研究を進めている。

「獣医師としても犬の飼い主としても、こういうものを長い間待ち望んでいた」と、クロフォードは新ワクチンを評価する。だが一方で、政府からの認可には困難が伴うだろうと指摘する。

「米農務省の審査は(不活化ワクチンと比べ)はるかに慎重に行われると思う」と、クロフォードは言う。犬もヒトインフルエンザウイルスに感染する可能性があるからだ。ワクチン接種の前後にヒトインフルエンザに感染した場合、犬の体内で新型ウイルスが生まれかねない。

「インフルエンザウイルスは遺伝子組み換えを非常に起こしやすいことで知られている」と、クロフォードは言う。「だから、犬とヒトの両方に感染する能力のある第3の新たなウイルスが生まれる可能性がある」

[2017年3月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国・尹前大統領が非常戒厳を謝罪、判決は報復と批判

ワールド

フィリピン、南シナ海巡り中国と「対話ルート維持」 

ワールド

ウクライナ、26年の防衛輸出「数十億ドル」も 戦時

ワールド

仏伊首脳が非難の応酬、仏極右活動家死亡事件で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 6
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 7
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 8
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中