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英語やプログラミングより「ファイナンス」を始めなさい

2017年2月1日(水)17時43分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

triloks-iStock.

<ファイナンスは錬金術ではないが、それでもその習得は必要不可欠だと、若き実業家の正田圭氏。習得に必要なのは「本気のぶつかり稽古」だ>

今はさながら「ファイナンス」のプチ・ブーム。ただし、ファイナンスについては3つの大きな勘違いが流布していると、正田圭氏は言う。

1つ目は「ビジネススクールで知識として学ぶもの」、2つ目は「数式ばかり出てくる難解なもの」。正田氏によれば、いずれも正しい捉え方ではない。そして3つ目の勘違いについて、彼はこう述べる。

「ファイナンスは、それだけわかったからといってお金を生み出せるような錬金術ではない」

であれば、ファイナンスとはいったい何なのか。1986年に生まれ、15歳で起業。現在、M&Aの最前線で活躍する若き実務家である正田氏は、新刊『ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさい。』(CCCメディアハウス)でまずファイナンスを定義づけし、その後、ファイナンスに関する考え方や技術をわかりやすく解説している。数式を使わずに、ファイナンスの本質を明かした一冊だ。

ここでは本書から一部を抜粋し、4回に分けて掲載する。第3回は「第2章 ファイナンスに関するよくある勘違い」より。


『ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさい。』
 正田 圭 著
 CCCメディアハウス

※第1回:「使えるファイナンス」をもつ人材が日本に足りない
※第2回:ファイナンスは教養、「物の値段」を考えること

◇ ◇ ◇

ファイナンスは「ぶつかり稽古」でしか身につかない

 私はM&Aなどの案件に携わるようになって、投資銀行の人たちと共に案件を進める機会が多くなりました。私は当初、彼らはすごく仕事ができるのだろうと考えていました。確かに、彼らは分厚い資料を短時間で作成する能力やエクセルを使う能力に長けています。でも、私は彼らの仕事にとてつもない違和感を覚えました。

 投資銀行の人たちの多くは、企業や事業が実際のところ何をやっているのかとか、この事業の収益の源泉になっている部分はどこかとか、そのようなことを一切考えずに仕事をしているのです。

 あるいは、そのような思考がすごく苦手なのです。

 今思えば、彼らは実際の事業の運営に当事者として取り組んだことがないからだとはっきりとわかります。彼らの大部分は、ファイナンスの数式を暗記しているのと、あとはエクセルのショートカットキーや資料にどの色を付ければ見やすくなるか等のテクニックに長けているだけで、何か新しい付加価値を創造する能力はなかったのです。

 誤解のないように申し上げておきますが、投資銀行家がみな優秀でないと言っているわけではありません。当然ながら、投資銀行家の中には大変優秀な方もいらっしゃいます。300人に1人くらいではありますが、投資銀行の側から、しっかりと事業を理解して、企業に莫大な価値を創出している方もいらっしゃいます。

 私のファイナンスの師匠に当たる人も、その一人だったと思います。

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