最新記事

トランプ政権

「ペンス大統領」の誕生まであと199日?

2017年2月21日(火)18時30分
ロナルド・ファインマン(ニューヨーク市立大学非常勤教授)

副大統領として就任宣誓したペンスだが? Kevin Lamarque-REUTERS

<マイク・ペンス副大統領は、アメリカの外交政策が地に堕ち、国家の安全保障が危険にさらされる様子を、ただ眺めているつもりはないようだ>

マイケル・フリン国家安全保障担当補佐官がロシア関係のスキャンダルで辞任に追い込まれた一件は、ドナルド・トランプ政権を揺るがしている。フリンは、公職に就く前、駐米ロシア大使との電話で、当時のバラク・オバマが発動した対露追加制裁について「今は騒ぐな、遠からず解除するから」というニュアンスのことを言ったとみられている。民間人が外交を行うのは違法だし、マイク・ペンス副大統領に事実関係を聞かれたときは制裁の話はしていないと嘘をついた。

そして今、疑いの目は周囲の反対にもかかわらずフリンを安全保障担当の補佐官に指名したトランプに向けられている。トランプはもともと、ロシアのウラジミール・プーチン大統領との「親密な関係」を保守派や共和党員に非難されてきた。フリンのスキャンダルによって、トランプにはアメリカの伝統的な外交の原則を踏襲する気がないという疑いがますます強まっている。

【参考記事】トランプとロシアの接近に危機感、西側同盟国がアメリカをスパイし始めた

評論家たちはかねて、フリンは信頼性に欠け、判断力に乏しいと睨んでいた。かつての同僚たちも、フリンが事実をねつ造する傾向があることについて「フリン・ファクト(フリンの事実)」とブラックジョークを飛ばしてきた。さらにフリンは、プーチンと近すぎることでも批判されてきた。共和党全国大会では、「ヒラリー・クリントンを逮捕しろ!」の大合唱("lock her up" chants)にも加わっている。

ありえない外交

その大ボスが、トランプである。外交政策専門家の多くは、トランプが公の場やツイッターで繰り返す不適切な言動や、感情の起伏の激しさ、見境のなさを目にしては首を横に振ってきた。

北朝鮮のミサイル発射実験に関する国家安全保障上のやりとりを衆人環視のディナーの席で行ったことは、責任感が欠如している表れだ。オーストラリアのマルコム・ターンブル首相との電話会談を一方的に打ち切って恥をかかせたことも大問題だ。オーストラリアは、この100年で4度の戦争を共に戦ったアメリカの同盟国なのだ。

中国との交渉では、トランプは手のひらを返した。最初は「1つの中国」を前提にはしないと台湾の蔡英文総統と電話会談までして、その後、中国からの無言の圧力に屈して撤回した。また中東の「2国家共存」案をめぐる支離滅裂ぶり(「『2国家』だろうが『1国家』だろうが、イスラエルとパレスチナの両方がハッピーなほうでいい」とトランプは言った)や、NATO(北大西洋条約機構)に対する強力な支持の欠如も大きな問題だ。

【参考記事】トランプを追い出す4つの選択肢──弾劾や軍事クーデターもあり

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:解体される「ほぼ新品」の航空機、エンジン

ワールド

アングル:汎用半導体、供給不足で価格高騰 AI向け

ワールド

米中間選挙、生活費対策を最も重視が4割 ロイター/

ワールド

ロシア凍結資産、ウクライナ支援に早急に利用=有志連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中