最新記事

トランプ政権

「ペンス大統領」の誕生まであと199日?

2017年2月21日(火)18時30分
ロナルド・ファインマン(ニューヨーク市立大学非常勤教授)

ペンスがフリンの排除に大きな役割を果たしたという事実は、すでにペンスがトランプに対して自己主張を行っている証拠だろう。どうやらペンスは、アメリカの外交政策が地に堕ち、国家の安全保障が危険にさらされていく様子を、ただ横で眺めているつもりはないようだ。アメリカ国民も、まさにそれを望んでいるはずだ。

【参考記事】「ロシアが禁止ミサイル配備」にも無抵抗、トランプ政権の体たらく

ペンスはエスタブリッシュメント(支配階級)の共和党員で、連邦下院議員として12年の経験を積んできた。連邦下院議員時代の最後の2年間は下院共和党会議議長としてリーダーシップを発揮し、その後、インディアナ州知事になった。

ペンスは真面目で抜け目のない共和党員だ。敬虔なキリスト教徒として、妊娠中絶や同性愛に強く反対し、地球温暖化にも否定的な立場を取ってきた。そうした姿勢はインディアナ州の穏健な共和党支持者に煙たがられた。

ペンスは副大統領の任務の重大さを心得ており、その物腰やボディーランゲージから、トランプの勝手で軽率な行動をしばしば不愉快に感じている様子が見て取れる。

憲法修正第25条第4項で

フリンの問題をめぐっては、共和党のポール・ライアン下院議長とミッチ・マコーネル上院院内総務も真相の追及を後押ししており、本格的な捜査が進むはずだ。共和党上院議員のジョン・コーニン(テキサス州選出)、ロイ・ブラント(ミズーリ州選出)、リンジー・グラハム(サウスカロライナ州選出)、ジョン・マケイン(アリゾナ州選出)も、フリンの公聴会への召喚を求めている。

米大統領就任から史上最も早い段階で(就任から25日)発覚した重大スキャンダルについて、FBIの捜査が進展するにつれて、トランプの辞任や弾劾を求める声が上がるだろう。

ペンスは表向きにはトランプを擁護するという難しい仕事があるが、裏では特に外交や安全保障に絡む問題で、トランプの過激な言動を封じ込める役割を果たしてくれそうだ。

ペンスが置かれた状況は、政治が混乱を極めたリチャード・ニクソン政権で副大統領を務めたジェラルド・フォードと似ている。というのも、もしトランプが衝動的な言動で共和党トップや外交政策エリートを邪魔し続ければ、米議会がトランプに反旗を翻す可能性があるからだ。

たとえトランプが猛烈に反対しても、大統領に職務遂行能力がない場合の手続きを定めた合衆国憲法修正第25条第4項に則り閣僚の過半数が賛成すれば、ペンスは「大統領代理」になれる。これを国民と関わりのない「宮廷革命」と呼ぶ人もいるが、とにかくペンスは、もはや危険すぎてトランプを大統領職に置いておけない証拠を並べ立て、説得力を持って論証できればいい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 3
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中