最新記事

ネットに広がる「フェイク・ニュース」― 嘘と真実の見分け方とは

2016年12月5日(月)15時00分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

adamkaz-iStock.

<アメリカの大統領選でトランプの勝利を決定づけた、と言われるほどのフェイク(偽)・ニュース。フェイク・ニュースの影響力の増加と対をなし、ニュースメディアでニュースを読む人よりも、フェイスブックなどのSNSで「ニュース」を読む人が増えている。国をも誤らせかねないこの危険にどう対処すればいいのか>

「フェイク・ニュース」という言葉をよく聞くようになりました。

 先の米大統領選挙では、フェイク(嘘)のニュースが広がったためにクリントン民主党候補が敗れ、トランプ共和党候補が勝ったとも言われました。

【参考記事】トランプを大統領にしたのはネットで飛び交う偽ニュース?

 真実ではないニュースが広がってゆく動きは昔からありましたが、インターネットが登場し、情報拡散力が高いソーシャル・メディアによって、あっという間に多くの人に情報を伝達することが可能になりました。第2次大戦中の名宰相ウィンストン・チャーチルは「真実がズボンをはく前に、嘘は世界を半周してしまう」と言ったそうですね。この動きが現在ではさらに加速化しています。

 先の米大統領選では「ローマ法王がトランプ氏を支持」(WTOE 5ニュース)、「クリントン氏の流出メール担当のFBI捜査官が無理心中」(デンバー・ガーディアン)といった嘘のニュースがフェイスブックで大きく拡散されました(2つとも嘘のニュースを流すサイトであることが調査で判明しています)。

ニュースサイトよりフェイスブックの読者が多い

 一連の嘘のニュースは米国の主要ニュース・サイトに掲載されたニュースよりもフェイスブックでのシェア数が多かったという調査結果が出ています。

 英国でもフェイク・ニュースは発信されています。サウスエンド・ニュース・ネットワークというサイトが「『デーリー・メール』紙、レゴがガンを発生させると表明」と題する記事を掲載しました(11月12日付)。組み立てて遊ぶおもちゃのレゴに発ガン性があるとして、デーリー・メールが広告の掲載を引き上げた、という内容です。

【参考記事】偽ニュース問題、米大統領選は始まりに過ぎない?

 サフォーク・ガゼットというサイトには、「トブラローネの形を巡り、英国がスイスに侵入すると脅す」(11月8日付)という見出しの記事が掲載されました。トブラローネは三角形のチョコレート・バーです。一つ一つの三角形の間に溝があり、ここを折って小分けにして食します。製造会社がこのチョコの形を変更することになり、メイ首相が英軍を派遣することも辞さないと述べたという話です。どちらもよく考えると荒唐無稽で、特に後者はスプーフ・サイト、つまり冗談で作ったサイトであることが分かります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中