最新記事

ネット

ネットで飛び交う偽ニュースがトランプを大統領にしたのか?

2016年11月17日(木)17時40分
アンソニー・カスバートソン

Carlo Allegri-REUTERS

<ネットやSNSで流れる「偽ニュース」が大統領選の結果を歪めたという議論が噴出。グーグルやフェイスブックは、偽ニュースの規制に乗り出したが、本当に偽ニュースが影響したのかという疑問は残る>

「ローマ法王が大統領選でトランプを支持!」「クリントンはレズビアンで、闇の小児性愛ネットワークの元締め」――これらはもちろん真っ赤なウソだ。だが、今回のアメリカ大統領選では、こうした偽ニュースやデマがネットを通じて大量に拡散された。

 開票結果の衝撃も冷めやらぬ中、トランプ勝利に不満を持つ有権者の間ではグーグルやフェイスブックの責任を問う声が上がっている。偽情報の拡散を黙認したことで、結果的に世論誘導に加担したのではないか、というのだ。

 非難の矢面に立たされたグーグルとフェイスブックは、こうした偽ニュースがニュースフィードに流れないよう対策を取ると発表。規制の対象となりそうなニュースサイトは猛反発している。

【参考記事】サイバーテロが浮き彫りにしたIoT時代のネットセキュリティ

 真っ先に反対の声を上げたのは、トランプの側近スティーブ・バノンが会長を務めていた保守系ニュースサイト「ブライトバート」ではない。トランプだろうとクリントンだろうと、政治家や権威を片っ端からぶった切る風刺ニュースサイト「サウスエンド・ニュース・ネットワーク」だ。

 偽ニュースサイトが規制されれば、トランプの勝利に「全面的に責任がある」と皮肉たっぷりに自称している同サイトも、読者と広告収入を失いかねない。「我々は全面的かつ率直に非を認め謝罪する。どうやらネットの利用者は自分たちが読むコンテンツを批判的に分析する能力がないということらしい。我々はこの事実を厳粛に受け止める」

 同サイトはさらに、イギリスのEU離脱を決めた国民投票の結果や、「サッカー欧州選手権でイングランド代表が早々に敗退したのも、(イギリスで80年代に放映されていた子供向け番組)『バトン・ムーン』の放映が中止されたことも」すべて自分たちが悪いと、ふざけた謝罪を行った。「ちなみに、後者については、我々も慚愧に堪えない」

 一方、グーグルのスンダー・ピチャイCEOは今週、BBCのインタビューで、グーグルニュースに表示された偽ニュースやSNSで拡散したデマが大統領選の結果に影響を与えた可能性は否定できないと語った。

「これについては多くの議論がなされているが、忘れてはならないのは今回の選挙が僅差の接戦だったことだ。これは私見だが、100人中1人の有権者がどちらに入れるかで結果が変わったと考えられる。これほどの接戦では、実に多くの要因が勝敗を分けたはずだ。結果に関して騒々しい議論が巻き起こっているが、これが決め手だと断言できる要因はないと思う」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中