最新記事

日米関係

トランプ・安倍会談で初めて試される次期大統領の本気度

2016年11月16日(水)16時26分
マイケル・グリーン(ジョージタウン大学準教授、専門は東アジアの政治外交)

安倍は、アジアの運命を背負ってトランプとの会談に臨む Soe Zeya Tun-REUTERS

<アメリカのトランプ次期大統領と日本の安倍晋三首相が会談する。ワンマン指導者と相性がいいと言われる安倍が過激なトランプを修正できないか、アジアとヨーロッパの諸国が注目している>

 次期アメリカ大統領に就任するドナルド・トランプは17日、ニューヨーク市内で自身が保有する「トランプタワー」で日本の安倍晋三首相と会談に臨む。安倍が世界の指導者として当選後のトランプと初の会談にこぎつけたのは、9日に2人が行なった電話会談で、安倍側が19~20日に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に先立ちニューヨークを訪問することを申し出たのがきっかけだ。アジアとヨーロッパ諸国は両者の会談を注意深く見守るだろう。

安倍は独裁者と話が合う

 私は安倍がトランプと親密な関係を築くとみている。安倍は聞き上手なうえ、世界の独裁者とウマが合う。インドのナレンドラ・モディ首相、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領など、ワンマンタイプと相性がいい。安倍自身は反エリート旋風を受けてトップに立った指導者ではないが、独自の国家主義的傾向を強めている。彼は決断する指導者だということを、トランプは即座に読みとるはずだ。初対面は友好ムードに包まれそうな気配だが、日本は他のアジアや世界中の国々と同様、中国や北朝鮮の脅威が高まるなかでトランプ政権が誕生することが、自国の安全保障にとって何を意味するのか気になって仕方ない。

【参考記事】「トランプ政権下」の日米関係をどう考えるか?

 先週の大統領選後に行なわれた世論調査から、日本国内の不安が見て取れる。トランプが大統領に選ばれたことを「良くなかった」と答えた割合が70%近くに上ったのだ。トランプ陣営の政策アドバイザーの面々はかねてから、ワシントンにあるアジア各国の大使館に対し傲慢な態度で、アメリカは国内のテロ対策や経済問題に軸足を移し、アジア太平洋地域におけるアメリカの軍事的プレゼンスを見直す、もしくはアジアへの関与を縮小すると伝えてきた。トランプがTPP(環太平洋経済連携協定)に反対していることは、秋の臨時国会でTPPの承認を目指す安倍政権にとって打撃だ。バラク・オバマ政権が任期中のTPPの議会承認を断念して現状での協定発効が絶望的になっても、安倍は日本こそ早期発効を主導するべきだと息巻いてきた。

 日本では極右も極左も反米主義のコメンテーターはこぞってトランプの勝利を歓迎し、これを機にアメリカから距離を置くべきだと主張している。オーストラリアや韓国をはじめ、アジア太平洋地域におけるアメリカの同盟国の間にも非常に似た論調が目立つ。

【参考記事】トランプ外交のアナクロなアジア観

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中