最新記事

フィリピン

ドゥテルテ大統領、虚偽の数字でフィリピン「麻薬戦争」先導か

2016年10月28日(金)10時55分

数字のプレッシャー

 フィリピン法執行機関のある幹部は、ドゥテルテ氏の「恣意的な」数字のために警察や政府当局者はプレッシャーを感じているという。

 匿名を条件に取材に応じたこの幹部は、「問題は、大統領が何か言うたびに、それがすでに何らかの政策表明になってしまっているという点だ」と言う。「とはいえ、われわれはそれに従わなければならない」

 この高官が一例として指摘するのは、いわゆる「自首」手続きを通じて当局に麻薬使用者や密売人として登録された、過去3カ月で70万人以上に及ぶ人々だ。だが、DDB報告書に記載された麻薬使用者数に合わせるために、少なくとも180万人の「自首者」リストを作成することが当局に期待されているという。

「われわれが、いま大変な思いをしている理由はそこにある。(それだけのリストを)作らなければならない」と彼は言う。「しかし、どれだけ頑張っても、180万人には到底届かない」

 PDEAのビラヌエバ氏は、麻薬問題に対する大統領の評価は妥当であり、彼自身は何のプレッシャーも感じていないという。

 ドゥテルテ大統領は「非常に大きな問題なのだと国民に知らせるために誇張しているだけだ」と同氏は言う。「その趣旨は、問題を解決するためにそして、気まぐれな麻薬使用者が慢性的な麻薬使用者になっていかないよう、懸命に努力しなければならない、ということだ」

 薬物中毒治療の専門家によれば、ドゥテルテ大統領や当局者の発言は、麻薬使用者と重度の麻薬常用者を区別していないだけでなく、「シャブ」使用者とマリファナ使用者の区別もないと指摘する。

 シャブは、攻撃性や精神疾患を含む副作用の強い、習慣性の高い覚醒剤だ。

「リスク特性や有害性という点で、シャブとマリファナはまったく異なる物質だ」と語るのは、アデレード大学薬物アルコール治療研究センターのロバート・アリ所長。「シャブのほうが中毒になるリスクが高いし、より広範囲の身体的・精神的なダメージと関連している」と世界保健機構にも協力している同所長は説明する。

 アリ所長によれば、フィリピンでは実際に麻薬乱用が問題になっているとはいえ、虚偽データに基づいて実効性ある国家的な対応策を考案することは難しい。「糖尿病であれ麻薬であれ、公衆衛生において、手持ちのリソースをうまく使うには、それがもたらす損害による負担を把握する必要がある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 2
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中