最新記事

中国

没後40年、現代中国の市場経済優先に抵抗する毛沢東主義者

2016年9月12日(月)10時02分

9月8日、中国共産党の内外を問わず、過去30年間の市場主義改革は行き過ぎであり、貧困などの社会格差や汚職を生んでいると考える左派(保守派)勢力にとって、9日に没後40年を迎える毛沢東主席は有力なシンボルとなっている。写真は同主席の肖像画の隣でポーズをとる男性。北京での毛沢東関連の美術展示会にて(2016年 ロイター/Thomas Peter)

 紅衛兵の集団に手を振る毛沢東の姿を北京で初めて目にしたときのことを語りながら、王士吉氏は目に涙を浮かべた。毛沢東が階級闘争を宣言して「文化大革命」を開始した1966年のことだ。

「あのとき私は、毛主席のために自分の人生を捧げようと決意した」と元兵士の王氏はロイターに語った。「紅衛兵として生き、紅衛兵として死ぬこと、常に紅衛兵であり続けることを私は誓った」

王氏によれば、汚職から貧富の格差拡大に至るまで、現在中国が抱える問題はすべて、1970年代終盤に、毛沢東主席(1893─1976年)の死後に鄧小平が主導した歴史的な経済改革にまで遡ることができるという。王氏はこれを「修正主義」と呼ぶ。

「こうした悪影響を根絶するには、今のような民営化をやめるしかない」と王氏は言う。

 中国共産党の内外を問わず、過去30年間の市場主義改革は行き過ぎであり、貧困などの社会格差や汚職を生んでいると考える左派(保守派)勢力にとって、毛沢東は有力なシンボルとなっている。

 こうした人々は、9日に没後40年を迎える毛沢東を礼賛することで、現在の指導部と彼らが推進する市場志向政策に対する圧力をかけようとすることもある。

 毛沢東は、現代中国の建国者として中国共産党から公式な敬意を捧げられており、人民元紙幣にはすべて毛沢東の肖像が印刷されている。だが、自身のイメージを現代化しようと、共産党が毛沢東の遺産を軽視したがっているのではないかと危ぶむ声もある。

 当局者が否定しているにもかかわらず、左派過激主義のウェブサイトには、北京の中心部・天安門広場にある観光名所の毛主席記念堂が閉鎖、あるいは別の場所に移転されるのではないかという憶測が周期的に広がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中