最新記事

中国

没後40年、現代中国の市場経済優先に抵抗する毛沢東主義者

2016年9月12日(月)10時02分

 1月、河南省において、高さ36.6メートルの金色の毛沢東像が正式に登録されたものではないとして当局により撤去されたことに、毛沢東支持者たちは激怒した。

 王氏は、毛沢東の歴史上の地位が無視もしくは過小評価されているのではないかと懸念し、先月「中国保衛毛沢東人民党(毛沢東を保衛する人民党)」と称する政党を立ち上げた。中国共産党に対する露骨な挑戦である。そのうえ彼は、「毛継東」(毛の遺産を継ぐ者の意)というペンネームまで使っている。

 自身の権威に対する挑戦を決して認めない中国共産党にとって、これらの政党は許しがたい存在だ。

 王氏は、毛沢東は民主主義を望んだであろうと信じているという。彼は先週ロイターに、最初の党大会を砂塵の舞う北部都市、石家荘で今週開催する予定だと述べ、約50人の参加を見込んでいると語った。

 だが6日、理由に触れることなく党大会の中止を知らせる短いテキストメッセージが王氏から送られてきた。その後、王氏と連絡が取れなくなっている。石家荘の警察はコメントを拒否している。

毛思想

 中国共産党は毛沢東にも誤りがあったことを認めているが、中国を混乱と暴力の渦に陥れた1966─76年の文化大革命(文革)や、何百万もの餓死者を出した1958─61年の「大躍進」については、まだ公式の説明がない。

 習近平国家主席は、個人的に文革で苦しめられた立場である。父親は投獄され、習氏自身も、都市部で暮らす何百万人もの中国人青年と同様に、地方に送られ、農村での生活を強要された。

 指導部との人脈を持つ情報提供者がロイターに語ったところによれば、毛沢東の命日である9日、少なくとも北京では目立ったイベントは行われない可能性が高いと話している。ただし国営メディアは、出身地である湖南省ではイベントが行われると告げている。

 だが毛沢東は、はるか遠く離れた地で記憶を呼び覚ましている。

 オーストラリアの2大都市、シドニーとメルボルンでは、毛沢東の命日を記念するコンサートが中止された。一方については、中国系市民から内容が不穏当であるという苦情があり、安全上の懸念があるためだとされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ

ワールド

バイデン・トランプ氏、6月27日にTV討論会で対決

ワールド

ロシア、ウクライナ攻勢強める 北東部と南部で3集落

ワールド

米、台湾総統就任式に元政府高官派遣
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中